単純
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「南!!!!」
私は自分の声で目覚まし時計よりも早く目覚めた。
久しぶりに見た悪夢。
密かに片想いしている南烈に彼女ができる夢。
「最悪…」
朝から気分が落ちる。
食欲が出るはずもなく私は朝ご飯も食べずにとぼとぼと学校への道を歩く。
大阪に引っ越してきて、1年半。
学校までの道のりもすっかり慣れたものだ。
…でも、リアルだったなぁ。
正夢になってもおかしくない。
だって今は3年生の9月。高校生活もカウントダウンが始まっている。
みんな心残りがないようにと告白する人もいる。
…地味にモテるんだよね南。
あんなぶっきらぼうで無愛想なのに。
けど、自分の意見をちゃんと持ってるし、優しい奴なんだよなぁ。
そんな南に私は惚れちゃってるんだよなぁ。
はぁ…
「なにデカいため息ついてんねん」
後ろからの声に私は一気に心臓の音が跳ね上がる。
聞き間違えるはずのない、大好きな人の声。
「はよ」
「お、おはよう南。」
やばい。
なんか朝一番で会えた嬉しさと、今朝見た夢のリアルさでなんか泣きそう。
気持ちの整理がつかない。
「おい?お前どうしたん」
「……」
うまく話す事もできない。
ーーーーポンっ
私の頭に何かが乗る。
南の手のひらだった。
「まあ、なんかしんどい事あったら言えや。」
「え?」
「5分500円で話聞いたるわ。」
「なっ…」
「ほな、また後でな」
南はニヤニヤしながら先へ進んで行った。
そんな南の後ろ姿を見て私はニヤニヤが止まらない。
ほらね、優しいんだよ。
あんなに落ち込んでた気分はもうどこへやら。
「おっはよーー!」
「おはよう、まなみ。朝から元気やね」
教室でクラスメイトにこんな事を言われる始末。
「ホンマに元気やな。さっきの落ち込みどこいったんや」
南にも声をかけられる。
「だって、それは南が……!!」
私は言いかけた言葉を慌てて止める。
「…俺がなんやねん」
「な!なんでもないよっ!!」
大慌てで両手を左右にふる。
全然納得のいかない顔をする南。
「南ーーーーー!お客さんやで!!」
教室のドアから南を呼ぶ声。
誰か知らないけどナイス!!!
「ほっ、ほら!呼んでるよ?!」
南はブスっとした顔でドアに向かっていった。
あ、危ない。危ない。
私は本人を目の前にして何言おうとしてるんだ。
チラッとドアの方に目をやる。
えっーーーー
女の子?!
南に女の子のお客様?!
……楽しそう。
南って女の子にあんな顔するっけ。
私は思わずガタッと自分の席を立つ。
「まなみ?」
友達が心配そうに声をかけてくれる。
「ちょっと、ね」
私は南たちがいる反対側のドアから教室を出ていく。
…教室から出たもののどこへ行けば。
ただ教室に居たくなくて思わず出てきちゃったけど。
とりあえずトイレ…かな?
もうちょっとで授業始まっちゃうし。
グッ
「いたっ」
いきなり腕を強くつかまれ私は声を出す。
振り返ると
「お前ホンマにどうしたん?」
「南…どうして」
「おま、泣いてんのか?」
え?私泣いて…??
南は私の腕を掴んだままグングン進んでいく。
「ちょっと、南!どこ行くの?!授業始まるよ?!」
「サボり」ニヤッと笑う南。
ついた先は屋上。
「まだ暑いなぁ」
「えーと…南??」
「で、何があったん?」
手すりによしかかりながら南は私を真っ直ぐに見る。
「え、何がって…」
まさかあなたに彼女ができる夢を見て落ち込んで、頭ぽんで復活して、女の子と楽しそうにしている所を見て再び落ち込んでます。
なんて言えるわけない。
「み、南って女の子の前でもあんな楽しそうな顔するんだね!」
「は?」
「普段女の子と喋らないから意外だったなぁ。あははは…あの子と付き合っ…」
言い終わる前に私の視界は真っ暗になった。
気付いたら南の腕の中。
状況が把握出来ない私。
それなのにーーーー
クスクスと笑っているのは私を抱きしめている南烈。
「そーゆーことかいな」
「ちょっと…南?」
私は身動きができない中でも南を見上げる。
チュッ
「?!?!」
「ヤキモチ妬いたんか。」
私にキスをしてニヤッと笑うこの男は、なんでこんなに余裕なのだろう。
「あの子は他校にいる俺の友達の彼女」
「えっ」
「何勝手に勘違いしてるんや」
南はクスクス笑いながら私を抱きしめる力を強める。
「え、あの…私、状況がよくわかってないんだけど…」
「どんだけ鈍いねん。」
「え?」
「惚れた女が元気ないと気になるに決まってるやないか」
惚れた女…惚れた女…
って。
「私?!」
すると爆笑する南。
……初めて見たかも、南の爆笑。
じゃなくて!!!
「ホンマにかわいいなぁ、まなみちゃんは」
南の笑顔はとても眩しくて。
残暑のせいか私の体はとても暑くて。
短時間でこんなにいろんな感情が爆発しそうになる事なんて、生まれて初めて。
「なぁ」
私を抱きしめる力を緩め、優しい声で話す南。
それだけで心臓が破裂しそうなのに。
「俺の事好き?」
とんでもない質問をしてくる。
す!好きだからこんな状況になってるんじゃない!!!
「ちゃんと言ってや?」
顔をのぞき込むずるい奴。
「…す、好き、です。」
………ちょっと何か言ってよ。
恥ずかしくて死にそうなんだから!!
ん???
目の前には私から目をそらし、真っ赤になっている南。
嘘でしょ。
あの南烈が照れてる。
「アカンな…ずっと聞きたかった言葉なんやけど。破壊力ありすぎや。」
そんな事を言う南に私が照れないわけがない。
真っ赤な顔をした2人でこの後の授業をサボったのは言うまでもないよね。
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