期待
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それからというものーーー。
私が牧くんを更に意識するようになったのは言うまでもない。
気付いたら牧くんを目で追っている。
ハマってしまった…。
そりゃあんな事言われたら、、ねぇ?
だけど、それからの牧くんは至っていつも通り。
なんら変わりなし。
私だけが意識してるみたい。
そんな気持ちが悔しくて、切なくて…。
だけど私からこの関係を打破する勇気もない。
それにバスケ部はこれから夏のインターハイがある。
もちろん海南は出場が決定しているけど
ーーー広島かぁ。
さすがに受験生の私には厳しかった。
応援に行く事など。。。
だから、行けないから一言だけでも。
「ま、牧くんっ!」
今日は終業式。
明日からは夏休みが始まる。
バスケ部はインターハイ、私は受験勉強。
だから、どうしても…
「佐藤、どうかしたか?」
帰り支度をしている牧くんを呼びとめる。
一言…一言ですむんだけど。
『インターハイ頑張ってね』
どうして言えないかなぁ、私は。
牧くんを呼び止めたものの何も言えず、沈黙が続く。
「や、ごめんね、なんでもない」
私は苦笑いして、軽く手を振り牧くんに背を向けた。
「佐藤」
後ろからいつもより少し大きめな牧くんの声。
私はドキリとして後ろを振り返る。
「一緒に帰らないか?」
ーーーーーーーーーーーーー
嘘みたい。
私牧くんと二人で下校してる。
こんなに近いと心臓の音が聞こえるんじゃないかとベタな事を思っていると、牧くんが口を開いた。
「なんだか、照れるな」
フッと笑う牧くんの顔は
ホントに照れてる?!と思うぐらい余裕な顔をしている。
「きょ、今日は部活ないの?!」
私は無理やり緊張を解きたくて、当たり障りのない話を振る。
「いや、2時からある」
「終業式の日まであるんだね…さすが。」
一緒に下校と言っても、私はバス通学のためバス停までの距離だけだった。
学校から目と鼻の先の距離にあるバス停なんてあっという間。
しょんぼりしている私に牧くんが話しかけてきた。
「…少し時間あるか?」
「え?!」
「時間があるなら、話でもしないか?」
嬉しすぎる牧くんからの提案だった。
「ほら」
「ありがとう」
すぐ近くのコンビニで牧くんはアイスを買ってきてくれた。
私たちはそれを公園のベンチに座り食べる。
まさか牧くんとこうしてアイスを食べる日が来るなんて。
チラッと牧くんを盗み見る。
が、バチッと目が合ってしまった。
バレた!盗み見してるのバレた!!
慌てて私はそっぽを向く。
「佐藤」
ドキッーーー
「アイス、たれているぞ?」
えっ
「嘘っ!!!??」
私の制服のスカートにはぽたぽたとアイスがたれ、シミを作ろうとしていた。
「うわ!最悪だぁ~」
慌てて鞄からティッシュを出しスカートにポンポンとあてる。
「うわぁ、これシミになるかなぁ。あ!でもすぐクリーニング出すしいっか!むしろ今日やってラッキー!!」
そう自分に言い聞かせていると、隣からクスクスと笑い声が聞こえてきた。
もちろん笑い声の主は牧くん。
「あ、すまない。コロコロと表情がかわるもんだから、おかしくなってな。」
牧くんは私のアイスを持ちながらまだ肩を震わせ笑っている。
「牧くんって…笑うんだね」
「なんだそれは。俺をなんだと思ってる。」
「あ、いや。なんかそんな顔見れて嬉しいな」
私はへらっと笑う。
あれ、、、私今なんて言った?
自分が言ったことに恥ずかしくなり牧くんから顔を背け、下を向く。
ポン
頭の上に何かが乗る感覚。
それは紛れもない牧くんの手のひら。
「ほら、溶ける前に食べろ。」
牧くんは私のアイスを差し出す。
「あ、う、うん。」
慌ててアイスに集中する…なんて事は出来るはずもない。
アイスは途中で溶け、下に落ちてしまった。
「あぁ…牧くんごめん、せっかく買ってきてくれたのに。」
「気にすることは無い。」
「ごめんね…」
「そんなにしょげるな」
牧くんは眉を下げ困ったように笑っている。
が、急に何かを思い立ったかのように話し始めた。
「そうだな、それならひとつお詫びをしてくれないか?」
「なんなりと!!」
私は胸を張って牧くんに向かい合う。
「インターハイが終わったら、真っ先に会ってくれないか?」