期待
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「ごめんなさい」
私は目の前にいる男子生徒に頭を下げ、くるっと後ろを向きその場を去る。
すると、少し先にサッと隠れる人影を見たような気がした。
…気のせいじゃない。
「牧くん?覗き見ですか?」
中庭の木に隠れようとしていたのだろう、だけど、その体格を考えたらとてもじゃないけど隠れきらないだろう。
「…すまない。別に覗こうとした訳では…」
申し訳なさそうに私に向き合ってきたのは、海南高校バスケ部キャプテンで同じクラスの牧くん。
彼とは2年生になって同じクラスになったのだが、1年生の頃からバスケ部のスーパースターの彼の事は誰もが知っているだろう。
少しほかの男子よりも老けた…大人びた顔立ちの彼は黙っていても目立っていたし、もちろん女子生徒からも人気があった。
まあ、そんな女子生徒の気持ちはわからなくもない。
大人の余裕…そんな空気を醸し出す彼を少なからず私だって意識をしていた。
「付き合わないんだな?」
「え?」
「さっきの男と」
「あ、うん…」
牧くんちょっとでも気にしてくれたりしないかな?
そんな淡い期待を持つことぐらいいいよね?
「話した事ない人だし…気になるひと、いるし…」
私はチラッと牧くんを見る。
「そうなのか」
……そんな純粋無垢な目でこっち見ないで。
そうですか、何にも考えてないんですね。
私たちは並んで歩き、教室へと向かった。
「牧くんは彼女つくらないの?」
「考えた事なかったな。」
……ホントに高3男子?
興味ないの?
モテるのに。モテるから興味ないの?
まさかゲ……
いやいやいや!!!!
そんな事を思っているとあっという間に教室に着いてしまった。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る中、牧くんは私の顔をじっと見つめてくる。
「え、な、なに?」
ドキドキと心臓が破裂しそうな中、牧くんは私にトドメをさす。
「どうしてだろうな、佐藤があの男と付き合わなくてよかったと俺は思っている。」
首を少しかしげ真っ直ぐな目で私の目をとらえて離さない牧くん。
それはワザとなの?
天然なの?
今の私にはそんな事考える余裕もない。
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