決意
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「っだぁ!もう!!!」
「むっ、リョーちん不調だな」
俺はバスケットボールを思い切り体育館の床に叩きつける。
二学期が始まりいつも通りの学校生活、部活の練習が始まった。
違うのはただ一つ。
毎日見に来ていた人物が姿を見せなくなったこと。
今はもう10月中旬、1ヶ月以上も来ていないことになる。
「まなみさんすっかり来ないな、リョーちん知らないのか?」
「俺が知るかよ!」
「おいおいリョーちん、アヤコさんがいないからってイライラするなよ」
あ?アヤちゃん?
学校の決まりでマネージャーは夏の大会で引退することになっている。
だから、もうアヤちゃんは部活には来ない。
そうか!!だから俺はこんなにイライラしてんのか。
いや、でもアヤちゃんにはもう男が…。
俺はなんとなく気づき始めていた気持ちに、無理やりフタをして練習に戻った。
なのにーーーーー。
なんでだよ。
なんでこんな場面に遭遇すんだよっ!!!
放課後、今日も部活へ行こうと体育館へ向かう俺の目の前には1組の男女。
中庭で向かい合っている。
明らかにアレな雰囲気。告白だろう。
女子は二学期に入ってめっきり俺の所に来なくなったまなみちゃん。
男は……見た事あるけど、知らねぇやつ。
「…そうなんだ。」
少しだけど声が聞こえてくる。
「うん、前に進もうと思って」
前に進む?
俺を忘れて前に進むってことか?
だから、毎朝俺の教室にも来ねぇし、部活にも来ねぇってこと?
そいつと付き合うのか?
俺はその場にいる事が苦しくなり、元来た道を戻った。
どうしてこんなに苦しいんだよ。
今、俺の頭の中にいる子は誰だ?
大好きなアヤちゃんか?
ちげぇだろ…。
俺は大バカだ。
こんな事にならないと気づかねぇとか。
薄々はわかっていたはずだろ。
いつの頃からか俺の心を持っていってるのはのはアヤちゃんじゃねぇって。
まなみちゃんが好きだ。
アヤちゃんを好きだった気持ちは紛れもなく本当で。憧れとかじゃなく、本気で好きだった。
だけど、こんなに苦しい思いは初めてだった。
人を好きになるってこんなに苦しいのかよ。
まなみちゃんは今までどんな想いで俺に接してきてたんだろう。
「はは、おせーよ…。」
それから季節は過ぎ、冬の大会。
全国へ行けるのは1校、その切符をかけた試合に俺ら湘北はたった今負けた。
だけど、悔いはなかった。
整列が終わり、ベンチに戻る時ふと観客席を見る。
俺は1人の後ろ姿を俺は見逃さなかった。
「まなみちゃん…」
「え、宮城さん?!どこ行くんですか?!」
俺は慌てて走り出す。
見間違えるはずねぇ。
間違いなくまなみちゃんだ。
だけどーーーー
俺は会場のトビラをあけ、外へ出るまなみちゃんの後ろ姿を見届けて湘北ベンチに戻った。
今更どの面下げて、何言えってんだよ。
でも、なんで見に来てたんだよ。
自惚れていいのかよ、俺。
まだちょっとでも気にかけてくれてるって思っていいのかよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「リョータ!」
「アヤちゃん。」
今日は卒業式、最後のホームルームも終わり各々写真を撮ったり、教室はまだ賑わっている。
俺もクラスメイトと写真を撮っていた、そんな時に話しかけてきたのはアヤちゃんだった。
「卒業できてよかったわね」
クスクスと笑うアヤちゃん。
「どーにかね」
俺は苦笑い。
「…彼氏とは同じ大学なの?」
俺のそんな質問にアヤちゃんは一瞬目を丸くしたけれど、すぐにいつも通りになった。
「そっ、元々大学生。同じ大学へ行くわ。」
「そっか、おめでとう」
ようやく言えたな…。
「あんたはさ、いつもあたしに真っ直ぐな気持ちをぶつけてきてたわよね」
「うっ…お恥ずかしい」
「ふふっ、でも嫌いじゃなかったわよ。そーゆーリョータが。」
アヤちゃんはスっと俺に手を出してきた。
俺はその手を握り、握手をする。
「早く真っ直ぐな気持ちぶつけてきたら?」
アヤちゃんはそう言って他のクラスメイトの方へ歩いて行った。
俺の好きだった人はホントに最後までかっけぇな。
俺は急いで自分の教室を出て、隣のクラスへ向かった。
「あれ、リョータどうしたの?」
「ヤス!まなみちゃんは?!」
「え?さっきまでいたけど…今いな…」
俺はヤスの話を最後まで聞かずに廊下を走った。
向かう先はただ一つ。
俺はひとつの扉を音をたてないようにゆっくりと開ける。
きっといるはずだ。
俺の大好きなあの子が。
ーーーいた。
手すりに手をつき「よし!」と気合を入れている。
「なんの気合いだよ」
大慌てで振り向くまなみちゃん。
振り向く前にきっと俺だって声でわかったんだろうな。
久々に向き合う俺達。
「勝手にファン辞めやがって」
……違うだろ俺。
何言ってんだよ。
いや、でもこれも正直な気持ちのひとつだ。
素直な気持ちを伝えるんだろ。
俺はまなみちゃんに、ある物を投げる。
パシッとうまく受け取るまなみちゃん。
俺は少しずつまなみちゃんに近づく。
受け取った物が第二ボタンだと気付いたまなみちゃんは「これ…」と小さく呟く。
「好きだよ。まなみちゃん。」
ようやく言えた。
俺の真っ直ぐなホントの気持ち。
勢いよく抱きついてきたまなみちゃんは、「私でいいの?!」と色々理由をつけ聞いてくる。
あぁ、もう
ホントにかわいすぎ…。
俺はまなみちゃんの言葉を途中で遮る。
キスをして。
そしてまなみちゃんが俺と同じ大学へ行く受験勉強の為、俺に会いに来なくなった事を聞いた。
ポロポロと涙を流すまなみちゃんが愛しくて、俺は抱き締める。
ずっと追いかけてたと言ってくる、その姿がホントに苦しいぐらい愛しくなる。
俺はまなみちゃんを好きだと気づいた時、恋愛はこんなに苦しいものなのかと思った。
でも、今はそれ以上に恋愛はこんなに幸せなものなのかと実感している。
この子を、この幸せを一生手放すもんかと決意した18歳。
春はもうすぐーーーー。
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