鼓動
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絶対関わることなんてないと思っていた。
学年も違うし、私は美術部。
バスケ部なんて見に行ったこともなかった。
そもそもバスケのルールだってちゃんとわかってないし。
私はどこにでもいるフツーの女子高生。
だから、その他大勢の中の一人だと思っていた。
「まなみちゃーん」
来たっ!!!
一日の締めのホームルームが終わったあとに、ココ最近毎日やって来る人がいる。
学年が1つ上という事を全く気にもせず私の教室にズカズカ入ってくる。
「せ、仙道さん…」
「今日こそは練習見に来てくれるよな?」
ニコニコした顔で私の机に手をかけ、しゃがみこむのは陵南高校バスケ部のスーパースター《仙道彰》だ。
「いや、あの…私も部活あるんで」
「あ!また新しい絵できたら見せてね!」
ニッコリと笑う顔に私の心臓の鼓動は少なくともいつもの倍は早くなっているだろう。
「俺ホントにまなみちゃんの絵好きなんだよなぁ…あ!てゆーか、まなみちゃんが好きなんだけど」
ほら、またそういう事をサラッと言う。
正直いい加減にして欲しい。
本気にしている訳では無いけど、こんな素敵な人に言われたら心臓がいくつあっても足りない。
「早く部活行かないと怒られますよ?」
冷静を装いながら仙道さんに言う。
「あー、じゃあさ…」
しぶしぶゆっくり立ち上がる仙道さん。
「帰り、送らせて?」
ポンっと私の頭に手を乗せ
「約束な。」
そう言ってうちの教室を出ていった。
私は動くことが出来ない。
どんな顔をしているのかも自分では分からない。
だけど、顔が一気に熱くなっていることは分かる。
「真っ赤」
クスクスと笑いながら友達が話しかけてくる。
私は恥ずかしくなり、慌てて両手で顔を隠す。
「毎日すごいねぇ、あの仙道さんだよ?どうやって知り合ったんだっけ?」
「えっと…先週に」
1週間前ーーー
「んー、なんか納得いかない。」
美術部の私はただいま部活中。
書きかけのキャンバスを目の前に眉をしかめ、うむむ、、と苦戦中。
ここ最近なんだか自分の納得出来るものが描けないでいた。
描いてはやり直し、描いてはやり直し。
それの繰り返しだった。
顧問の先生にも「もう少し気楽にやれ」なんて言われる始末。
だから、今日も部活が始まる時間より少し早めに来て1人で美術室にいる。
「へぇーーすごいね」
いきなり真後ろから声が聞こえてきてうちは慌てて振り返る。
そして話しかけてきた人物に驚いて椅子から落ちそうになった。
「せっ、仙道さん…?!」
「あ、俺の事知ってんのー?」
いや、この学校であなたのことを知らない人はいないと思いますよ?
バスケ部のスーパースター。
長身、イケメン。ツンツン頭。
ただ廊下を歩いてるだけで目立つ。
そんな人を知らない人はいないでしょう。
「てかさ、すごいね。絵超上手だね。」
「え…」
「や、なんか上手っていうか、俺好きだな。」
ドキッと少女漫画のように私の心臓は高鳴る。
「い、いや…でもこれ描き直すんで…」
「え?!なんで?!勿体ないなぁ」
仙道さんは目を丸くして驚いてる。
こんな顔もするんだと私の心臓はまだうるさい。
すると仙道さんは少し何かを考え込み
「んー、まあ、自分が納得出来るまでやり直すって気持ちはわからなくもないかな。」
そう言って、片眉をさげ苦笑いする。
「…仙道さんもそういう時あるんですか?仙道さんなのに?」
「ははは、俺を何だと思ってんだよ」
外人のような綺麗な顔立ちで少年のように笑う仙道さんから目を離すことができなかった。
そしてなんだかかわいいと思い、クスっと笑ってしまう。
「その顔」
仙道さんは私の頬にそっと手をかけ
「さっきのしかめっ面より全然かわいい」
そんな驚きの一言を放った。
それから椅子に腰掛け、私の名前とクラス学年を聞いて、いつから絵を描くのが好きなのか、好きな食べ物はなにか、どんな音楽を聞くのか、なんて他愛もない話をした。
「あーーーっ!仙道!!」
と、そこへ1人の男子生徒があいているドアから顔を出し仙道さんを呼んだ。
「お前!こんな所にいたのかよ!早く部活行くぞ!!!」
「あらら、見つかっちまった」
仙道さんはゆっくりと腰を上げ美術室を出て…行くその前に私の耳元で爆弾を落としていった。
「俺、まなみちゃんの事好きになったみたい。」
そんな出会いだった。
思い出して更に顔が熱くなった。
そんな私を友達はニヤニヤしながら見ている。
「ぶっ!部活行く!!!」
ガタッと席を立ち急いで美術室へ向かった。
「なんか最近お前いい事あった?」
顧問の先生から言われギクリとした。
ーーん?ギクリ?なんで?
「どうしてですか?」
「いや、なんか楽しそうに描くなぁと思って。いいことだ、いいことだ。」
はっはっは、と笑って先生は私の元から去っていく。
楽しそう。
私、今までだって絵を描くのは楽しかったよね??
「まなみー?みんなもう帰るけど帰らないの?」
いつの間にか部活が終わる時間になっていた。
でも私はあと少し!もう少しで仕上がるのを止められなかった。
「私もうちょっとだけやってく!」
「りょうかーい!戸締りよろしくね」
そう言って部員のみんなは帰っていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「で、できた…できたーーーっ!」
久々に自分の納得出来る物が描けた私は嬉しさで大きな声を出していた。
「お疲れ様」
最近ではすっかり聞き慣れた声が後ろのドアから聞こえてきた。
「仙道さん…」
「すごい集中してたね」
そう言いながらそばへやって来る。
「え?!もしかしてずっと見てたんですか?!」
「ずっとって言っても15分ぐらいかな?ドアあいてたからさ。言ったろ?送らせてって。」
仙道さんは仕上がった私の絵を後ろからまじまじと見ている。
「やっぱり好きだなぁ」
「ありがとうございます。ちょっと照れるけど、私の絵を好きって言ってくれるのはやっぱり嬉しいです!」
「いや…絵はもちろんだけど」
ギュッーーーー
椅子に座った私を後ろから優しく抱きしめる仙道さん。
「さっきも言ったろ?俺はまなみちゃんが好きだよって。」
「え、ちょ、、、」
私はすっかり動揺して動けないし、何を言っていいのかわからない。
「まなみちゃんは俺が嫌い?」
「きっ、嫌いなわけないです…だけど、どうして…」
耳元で話す仙道さんの声が全身に響いておかしくなりそうだ。
すると仙道さんは私から体を離して後ろから前に移動し、しゃがみこんだ。
「初めて見た時さ」
仙道さんは私の目しっかり見て話す。
「すごいしかめっ面しててさ」
クスクス笑う仙道さん。
「ひっ、ひど!!」
「その顔から目が離せなくて」
きゅっと私の手を両手で包む。
「どんな顔で笑うのかなぁって思って、笑顔見た瞬間落とされたよね、まなみちゃんに。」
いつもとは違うちょっとニヤッとした男らしい顔に心臓は破裂寸前。
すると仙道さんは握っている私の手を更に強く握った。
「もう1回聞くね?」
何かを確信しているであろう顔。
「俺の事嫌い?」
わかっていて聞いているんだ。
「嫌いじゃ…ない、です。」
顔をスっと近づけ追い打ちの一言を私にぶつける。
「じゃあ、好き?」
ずるい。
きっとこの人は私が好きって言うまで手を離してくれない。
……でも、それもまたいいかも。
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