欲心
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「きゃぁぁぁ!!リョータくーん!!
ちっちゃくて探すの大変だけど、誰よりもかっこいいよぉぉぉ!!!」
「声援なのか、けなしてんのかわかんねーよ!!」
私、佐藤 まなみは絶賛片想い中。
湘北高校バスケ部キャプテン3年生の宮城リョータくんに。
はじまりは去年の秋ーーー
「じゃあ、明日からよろしくね」
「はい、あ、ちょっと校内見学してもいいですか?」
「うーん、今授業中だからコソッとならね」
「ありがとうございます。」
失礼しました、と私は職員室を出た。
明日からここ湘北高校の生徒になるのか…。
担任の先生が言っていたとおり今は授業中のため、廊下はしん…と静まり返っている。
私の目的はただ一つ、屋上!!!
前の学校は立ち入り禁止だったけど、湘北はどうなんだろう…。
学校の屋上とかよく漫画とかドラマで見たりしてるから、憧れなんだよねぇ。
あ、ここの階段怪しい。
こういう時の私のカンは当たるのだ。
階段を登りながら
(なんかいい事ありそ!)
そんな事を思っていた。
そう、私のカンは当たるのだ。
恐らく屋上への入口であろうドアノブに私はドキドキしながら手をかける。
ガチャ…
あいた!!!!
そぉ~っとドアをあけ、ゆっくりと顔だけを先に出す。
ぶわっと少し冷たい風が顔全体に吹きかかってきて、思わず「うわっ!」と可愛くない声を出す。
やった!やっぱり屋上だ!
すると少し先でゆっくり体を起こす男子生徒がいた。
あ、やば。起こしちゃったかな…。
ヤンキーだったらどうしよう。
少しビクつきながらも初めてこの学校で会う生徒に少し興味を持った。
その時何かがキラリと光り、思わず眩しさに片目を閉じる。
「…誰だ?」
片目で見たその姿に私は一瞬で落ちた。
もちろん恋に。
こんな衝撃を私は受けたことが無い。
言葉の通りその場に膝から崩れ落ちる。
「ちょっ…」
その人は慌てて私の元にかけより
「大丈夫?!」と声をかけてきた。
そしてかがんで私の腕を掴み支えてくれる。
「好きです!」
ズルッと私の腕を離す彼の顔は驚き以外のナニモノでもなかった。
「好きです!私と付き合ってくれませんか?!」
すると今度は後ろや横をキョロキョロと見渡し「え?!なに?!ドッキリ?!」と慌て始めた。
「違います!本気です!私はたった今あなたを好きになりました!」
あまりにも近くに詰め寄ってきた私に尻もちをつき、後ずさりをする彼はまるで不審者を見るような目で私を見ている。
「えっと……誰?なんで私服?」
「あっ、私明日からこの学校に通う佐藤 まなみって言います!」
「て、転校生?」
「そうでーす!クラスは2年2組です!」
「と、隣…」
「え?!やだ!もうこれは付き合うしかないですね!!」
「あ、あのさ、とりあえずちょっとどいてくんね?」
私は半分彼を押し倒している状況にようやく気付いて、慌てて離れる。
そして向かい合って座る。
その時またキラリと何かが光った。
ーーーピアスか。
あれ…ちょっと顔赤い?
「あ、あのさ気持ちは嬉しいってゆーかまだ信じらんねぇけど。俺好きな子いっから。」
間違いない、彼は顔を赤くして照れている。
信じらんないとか言って、信じてるじゃん。
「彼女いるんですか?」
「いや、片思いだけどっ」
ぐっと悔しそうな顔をする。
「じゃあ問題ないですね!まあ、彼女いても好きだけど」
「えぇ…??本気かよ…」
「てゆーか!名前、教えてくれません?」
「…宮城リョータ」
「リョータくん!これからよろしくねっ!」
私はリョータくんの手を両手で掴みブンブンと握手した。
それからというもの、私は毎日リョータくんに愛のアピールをしている。
季節が変わって、学年がひとつ上がり最高学年の3年生になった今でも。
リョータくんがバスケ部マネージャーの《アヤちゃん》の事が大好きなのは10も承知。
代わりになんかなれないことは100も承知。
「まなみはホントにめげないねぇ」
周りからよく言われる言葉。
「ホントに好きなの?単なるファンとかじゃなくて?」
これもよく言われる。
めげる?
めげてる暇あったらリョータくんに会いに行くし。
ファン?
もちろん、ファンだよ。そして好き。
今までの恋愛とは全然違う。
『この人が欲しい』
心の底から思った。
今すぐじゃなくてもいい。
何年、何十年かけてでもいい。
死ぬ間際でもいい。
ちょっとでも私のモノになるのなら、何でもする。
本気でそう思った。
一目見たその時から。
「でもよー、なんでリョーちんはまなみさんじゃダメなんだ?」
今年も夏のインターハイ出場を決めたバスケ部を一緒に見学していた桜木軍団の1人、高宮がこう言った。
「んなの、私が聞きたいわよ」
私は不貞腐れて高宮を睨む。
「だってまなみさんフツーに美人だし」
「高宮あんた良い奴ね」
「それに、前にリョーちんアネゴの事吹っ切るためにほかの女に告白とかして…むがっ」
他の桜木軍団が慌てて高宮の口をふさぐ。
「えっ」
「い、いや、なんでもねーよ!」
「そうそう!何でもない!!」
がしっ!!!
私は軍団の1人である洋平の肩をガッツリ掴む。
「その話詳しく聞かせてもらえる?」
「あ、今日満月だ」
空を見上げた私はまん丸の月を見て独り言をつぶやき、家までの道を歩く。
さっき洋平たちに聞いたことを思い出しながらーーー。
「い、いや、たまたま見かけたんだけど…」
洋平たちの話はこうだった。
リョータくんはアヤちゃんを忘れるために色んな女の子に告白をしていたらしい。
しかも、高校に入って10人も。
「私はアヤちゃんを忘れるための材料にもならないってか」
あれ…これけっこうダメージくるな。
初めて会ったその日からリョータくんの視界に入りたくて、毎日隣の教室まで遊びに行って、部活も毎日見学した。
もちろん試合も見に行った。
いつの頃からか「まなみちゃん」って呼んでもらえるようになった。
「今日もしつけーな」
なんて笑ってくれるようになった。
テストの点数を見せあってお互いに
「バカじゃん」
なんて爆笑もした。
なにこれ走馬灯ってやつ?
もういい加減諦めろって神様が言ってんのかな。
ねえ、神様。
どうやったらあの人を手に入れることができるの?
できないのなら教えてくれません?
どうやったらこの気持ちを無くすことができるのか。
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