予感
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夏休みーーー
それは高校生にとっては、いつもと違う何か特別な事が起こる予感。
心弾む事が起こる予感。
ちょっと髪色を明るくして、友達と
『あわよくばいい出会いがありますように』
なんて願いを込めて、いつもよりおめかしをしてプールに来てみたり。
でも、、、、
「ねぇねぇ、いいじゃん。俺らと遊ぼーよ」
目の前には3人組の男の人たち。
「君たちも3人でしょ?ちょうどいいじゃん!!」
もちろんそう簡単にはいかないわけで。
私たちは目だけで会話をする。
(タイプじゃないよね)
(却下)
中学校の頃からの親友である私達は目だけで、意思疎通が簡単にできる。
「いやぁ、大丈夫です」
断ってその場をそそくさと去ろうとした時、
ガシッと1人の男が私の腕を掴んだ。
「ちょっ」
「いいじゃん、そのつもりでプール来てんでしょ?」
確かにいい出会いがあれば、とは思ったけど…。
「図星でしょ?」
「離してください。」
私は悔しくなって無理矢理にでも男の腕を離そうとするが、なかなか離してはもらえない。
イライラと少しの恐怖感が襲ってくる。
「あれ、佐藤さんじゃん。」
後ろから声をかけられ振り向くと、同じクラスの水戸君とその他桜木軍団がいた。
「あれ?なにこの雰囲気」
水戸君は男に掴まれている私の腕を見る。
「あー、そういう事か。お兄さん達
無理矢理はよくないんじゃね?」
水戸君はこの状況を察してくれたらしく、
グッと男の腕を掴む。
「こ、こいつら湘北の…」
「あぁ、桜木軍団じゃね」
男達はバツが悪そうにどこかへ行った。
さすが桜木軍団…恐るべし…。
てゆーか、私も怖いし。
でも、お礼は言っとかないとね!!
「水戸君ありが…」
お礼を言おうとしたその時、私は友人の1人にぐいっと腕を引っ張られた。
「え、なに?」
「野間君いるじゃん!!ねえ!一緒に遊びたい!!」
そうだった…。
この子は桜木軍団の1人、おヒゲの野間君の事をかっこいいって言ってたんだ。
あくまでもヒソヒソ声だけど友人の勢いは物凄いものだった。
ふと水戸君たちの方を見ると、水戸君も軍団に腕を引っ張られ、ヒソヒソと何かを話している。
「あー、佐藤さんたちさ、よかったらこのまま俺らと遊ばね?」
「えっ?!」
思いもよらない水戸君からの提案。
「ほら、ボディガード代わりになんぜ!」
「はいはーい!遊ぶ遊ぶ!」
野間君ファンの友人は私ともう1人の友人の意見も聞かずにノリノリで手をあげて答える。
私達は「ま、いっか」と笑った。
とは言ったものの。
いくら水戸君と同じクラスとはいえ、ほとんど喋ったことはないし、正直ちょっと怖いし…
私は楽しめるか心配だった。
だけど、そんな心配はすぐにどこかへ吹き飛んでいった。
なんなのこの人達、バカすぎる。
めっちゃ面白い!!!
怖さなんてまったくなく、彼らもフツーの高校生だった。
私達は涙が出るほど笑う。
今日桜木君は部活があるらしく、4人で来ていたらしい。
水の中に潜って誰が1番長く息を止められるか、なんて今どき中学生でもやらないようなことを真剣にやっている。
ざばぁっ!!
どうやら野間君が1番長く潜っていたらしい。
「きゃあ!野間君かっこいい!!」
「そ、そお?」
え、何、もうできてんの?あの二人。
そう思っていたら、濡れた髪の毛をかきあげている水戸君と目が合った。
水戸君はいつものバッチリきめたリーゼントは崩れ、オールバックのような髪型になっている。
なんだかレアなものを見れたようで私は優越感にひたる。
それと同時にほんの少しだけ胸が高鳴った。
「なにニヤニヤしてんの?」
水戸君に言われギクリとした。
しまった…顔に出てたのか。
「いや…その…水戸君の髪。リーゼントじゃないのレアだなぁと思って。」
「ん?あぁ、濡れちまったからな」
水戸君は犬のように頭をフルフルと振った。
水戸君の髪の毛についた水がしぶきになって私の顔にかかる。
「ちょっとぉ!」
「ははは、わりぃわりぃ、わざと。」
水戸君は笑いながら私の頭をポンポンとなでた。
「佐藤さんも、髪違う。」
「え」
「髪色変えたろ?」
「あ、うん。夏休みだから調子こいちゃった。」
私は照れ隠しに笑う。
「似合ってるぜ。かわいい。」
夏休みーーー
それは特別な事が起こる予感。
心弾む事が起こる予感。
こんなの恋に落ちない方が無理でしょ。
始まったばかりの夏休みをこんなにも恨めしく思うのは初めてだった。
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