いたずら
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「おい!まなみ!お前だろ!俺のシューズの紐ぬいたの!!」
「あれ、越野さん今回は早かったですね」
「こんな事するのお前しかいねーんだよ。」
越野さんは呆れながら、〝早く返せ〟と言わんばかりに手を出してくる。
「いやぁ、残念ですね。今回は私じゃありませーん」
してやったり顔で私はニヤリと笑う。
「は?!」
「ちゅーす」
その時福田さんと仙道さんが体育館に入ってきた。
それを見た越野さんは何かに気付き、福田さんの肩をガッと掴む。
「お前か」
福田さんの首からぶら下げられた靴紐を越野さんは奪い返す。
それを見た私は『いえーーい』と福田さんとハイタッチ。
福田さんはもちろん『いえーい』なんて言わないけど。
すると越野さんは私と福田さんに1足ずつ自分のバッシュを投げつけてきた。
「ちゃんとヒモ通せよ」
「「え」」
私と福田さんの声がハモる。
「早くしろよ」
ギロっと睨みをきかせる越野さんに逆らえるはずもなく、私と福田さんは黙って靴紐を通し始めた。
「まぁ、こーなるのわかってましたよねー。でも、福田さんタイミングが悪すぎですね。あ、いや、よかったのか?でも、もうちょい慌てる越野さん見たかった気もするけど…あ!次はどんなのにします?!私またいいの考えてるんですけど………」
「おい、越野、あれは会話できてるのか?」
「魚住さん、アレはアレでできてるらしいすよ。一方的にまなみが話してるみたいに見えますけどね」
私は陵南高校1年生。
バスケ部のマネージャーやっています。
趣味は越野さんいじり。
……てゆーか、なかなか終わんない。
引くほど不器用な私は靴に紐を通すだけでも重労働だ。
イタズラをしたのは自分だから、自業自得なんだけど…
すると仙道さんがひょいと私から靴を奪うと、黙々と紐通しを始めた。
「え?!仙道さん?!」
私は大慌てで靴を奪い返そうとするが、返してもらえない。
「はは、あんまり福田と仲良さそうだから
ヤキモチやいちゃった」
「あ、じゃあ今度仙道さんも一緒にやります??越野さんいじり」
仙道さんはいつもこうだ。
私の事をからかう。
〝かわいい〟とか〝妬けちゃうな〟とか。
最初のうちは「えっ?!」なんて言って赤くなったりもしていたけど、最近では日常会話になっているのでかわすのも慣れたもんだ。
確かに仙道さんはかっこいいと思うけど、
こんな人の彼女になる人は大変なんだろうなぁ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「あれ、まなみちゃんも今日購買?」
数日後の昼休み購買で私は仙道さんに会った。
「あ、はい。」
寝坊してお弁当忘れた…なんて恥ずかしくて言えない。
「寝坊して忘れたの?弁当。」
「えっ?!?!」
「ははは、図星か」
仙道さんはニコニコしながら私の心を見透かしたかのように言ってくる。
「一緒に食べない?」
思いもよらない仙道さんからのお誘いだったが、私はある事を思い出し…
「いいですよ!」
と返事をした。
中庭で食べようかということになり、私は1度教室に物を取りに戻ったので先に待っててもらったのだが…
私が中庭に着いた時、仙道さんの周りには
数人の女子達がかたまっている。
ど、どうしよう。
仙道さんの人気はわかっていたつもりだったけど、あまり学校生活の事は知らなかったから甘く見てたなぁ。
私はどうしていいかわからず、ただその光景を眺めるだけだった。
「まなみちゃん!!」
私に気付いた仙道さんは私の名を呼び手を振った。
そして
「ごめんね、俺この子と食べるから」と
周りの女子に言い放ったのだ。
女子達は私の事を見て、バラバラと散っていった。
こわ…。
「遅くなってすいません。てゆーか、いつもああなんですか?」
「いやいや、そんなことはねぇさ。」
「お昼福田さんと食べてるんですか?同じクラスですもんね?」
私は購買で買ったパンをムグムグとほおばりながら聞く。
「まなみちゃんさ、そんなに福田の事好きなの??」
「あ、またヤキモチですかぁ??」
私はいつもの如くかわそうとする。
それなのにーーーー
仙道さんはパンを口に持っていこうとする私の手首を掴み
「ホントに好きなの?」
と私の目を見て言ってきた。
まるで
私が知らない、別人のような顔で。
声が出てこない。
いつもみたいにかわせない。
視線を逸らすことすらできない。
すると仙道さんはパッと私の手を離し
「ごめんな」と困ったように笑いながら小さく言った。
私はようやく視線を解放されたが、鼓動の早さを落ち着かせる事ができない。
「あっ、そうだ!これ!越野さんのロッカーに入れようと思って!」
仙道さんからお昼のお誘いを受けた時に思い出した事はこの事だ。
私はワタワタしながら、先程取りに行ってきた物をカバンから出す。
自分の気持ちを落ち着かせるためにも。
「へぇー、今でもこんな物あるのか」
仙道さんは笑いながら感心している。
私が取り出したのはゴム製の蛇のおもちゃ。
先日駄菓子屋で発見して即買いしたものだった。
「越野さんのロッカーは…」
「ここ、ここ」
私と仙道さんは中庭から部室に移動した。
越野さんへのイタズラのために。
私は越野さんのロッカーをあけて蛇のおもちゃをぶら下げようとした。
その時、廊下からこちらへ近づいてくる話し声が聞こえてきた。
「?!この声越野さんじゃないですか?!」
私は慌てながらも小声で仙道さんに聞く。
「あー、越野だね」
「ひぃぃ!バレちゃう!やだやだ!
仙道さんどうしましょう?!」
私はどうしていいかわからず軽くパニック
状態で仙道さんに助けをこうむる。
ガチャーー
「あ、やっぱりここにあったか」
越野さんは部室のテーブルに置いてある漫画を持ってすぐに部室を出ていった。
「せ、仙道さん?もう出てもいいんじゃないですか?」
目の前には仙道さんの胸板。
すっぽり仙道さんの腕の中に包まれている私。
なんなのこの状況。
越野さんが部室に入ってくる前に仙道さんに引っ張られ、やってきた…というか
入ったのは誰も使っていないロッカーの中。
もちろん190cmの仙道さんと一緒に入るために密着は必須。
とゆーか、完全に抱きしめられている。
そして離してもらえない。
「まなみちゃんさ」
「はぃ?!」
絶対今声裏返ったよね私…。
「本気だと思ってないでしょ?」
「え?」
「俺、まなみちゃんの事本気なんだけど?もう遠慮しねぇから。」
仙道さんドキドキしてる。
心臓の鼓動が私にも伝わってくる。
あの仙道さんがドキドキしてる。
なんだかそれがとてもかわいくて、愛おしく思えた。
「せ、仙道さ…」
チュッ
顔をあげた私に仙道さんはキスをした。
前言撤回!!!!
「何するんですか!!」
私は無理矢理にでも離れようとするが、仙道さんは私を抱きしめる力をいっそう強くする。
「無理だって。こんな状態で我慢出来るわけねぇよ。」
反則。
耳元でそんな事言わないでください。
私のドキドキが仙道さんに伝わる前に離れたいのに!!!
「まなみちゃんドキドキしてるでしょ?」
ほら、伝わった…。
すると仙道さんは私を抱きしめる手を離し、
ロッカーをあけた。
私は思わず外へ転びそうになる。
ガシッ!!
今度は後ろから抱きしめられる。
「これは不可抗力だよ?」
仙道さんは笑いながら言う。
「じゃ、じゃあ離してもらえますか?」
「はいはい」
仙道さんはゆっくりと私を離す。
私は今どんな顔をしているのだろう。
思わず両手で自分の頬を抑えた。
「いや、まなみちゃんかわいすぎ。」
仙道さんは私の頭を軽くなでる。
それに私はピクっと反応する。
「大丈夫、もう何にもしないよ。」
仙道さんはまゆを下げた笑顔で言い、ドアに向かって歩いて行った。
「今はね。」
部室から出る前に仙道さんが言い放った言葉に期待している自分が恥ずかしくなった。
そんな昼休みーーーー。
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