独占欲
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なんだか特別な夜になる気がした。そりゃそうだよ、高校生活の中で1位2位を争うぐらい大きなイベントだもん、修学旅行なんて。思ってたより寒い北海道の星空の下で甘酸っぱい何かが起こる予感……なんて、そううまくはいかないか。だから今こうして私は泊まっている旅館の部屋で女友達たちと「誰が好き」「あの2人が付き合い始めた」「あのカップルが別れた」と誰もがワクワクする恋バナに花を咲かせているのだ。
まさかこの数時間後、私自身の恋バナで大盛り上がりするなんて思ってもいなかった。
「まなみちゃんいる?」
そろそろお風呂へ行こうかとみんなで準備をはじめた頃、部屋にコンコンとノックの音が響いた。「はーい」と扉から1番近かった子が開けると、1人の男子生徒が顔を覗かせた。それは水戸くんで、彼はクラスメイトでもあり私のバイト仲間でもある男子だ。そんな水戸くんがどうしてこの部屋に?しかも私をご指名?!周りはニヤニヤしながら「いるいる~」なんて言って私の背中を押し、水戸くんの元へと差し出す。
「ちょっと借りるな」
みんなにそう言って水戸くんは私を旅館の外へと連れ出した。もちろん先生に見つからないようにコソコソと。なんだかそのスリルが楽しくてちょっとだけワクワクしてしまう。旅館の外と言ってもさすがに敷地外へは出られないので、敷地内の庭を散歩する事にした…が、同じことを考えている生徒は他にもいたらしく、数名の影が見えた。それはみんな男女のペアで寄り添って歩いていて、カップルっぽい……私たちも彼氏彼女に見えるのかな?そう考えると急に心臓がドキドキしてきた。今この瞬間、私と水戸くんはクラスメイトでもバイト仲間でもない肩を寄せ合うただの男女だ。
「にしても北海道は超でけーな。今日なんてほぼ移動だけで終わったもんな」
「ね、ホントに北海道はでっかいどーだよ」
「ははっ、くだらねぇ」
彼のことを『怖い』という話を周りからよく聞くがある。確かに見た目だけで判断するとリーゼントがバッチリきまっていて超ヤンキーだし、一緒につるんでいる友達もヒゲを生やしていたり、パンチパーマだったり、金髪だったり、極めつけは真っ赤な髪の毛の人だったりとあまり関わりたくないような見た目をしている連中だ。それでも水戸くんとバイト先が偶然同じになって、彼のことをよく知るようになってからは『怖い』なんて思うことはなくなっていた。全くね。
「ワルい、なんか思ったより寒かったな」
困ったように笑って、水戸くんは白い息を吐く。
ほら、全然怖くない。むしろ優しいんだよ。
11月の函館は偶然にも今日初雪が降ったとの事、雪を見れたのは嬉しかったけれど…ごめんなさい。北海道の冬、なめてました。想像の倍は寒くて、私は自然に自分の身体をぎゅっと抱きしめていた、一気に冷えた身体を暖めるかのように。上着は着てきたんだけどなぁ。
こんな時好き合ってる男女は手を繋いだりするの?身を寄せあって少しでも寒さから逃れようとするの?なんて事を考えているとポッポと顔が熱くなってきた気がする。するとバサッと私の肩に何かが被さった。被さったまま手で触ると、それは水戸くんが着てきていた上着だった事がわかった。
「え?!いいよいいよ!水戸くんだって寒いじゃん!」
「大丈夫だって」
寒いのは2人とも同じ、さすがにコレは申し訳なさすぎるよ。それなのに水戸くんはニッと笑い、私が返そうとした上着を再度肩に被せ、ポンポンと手を乗せた。
そのしぐさはまるで、前から抱きしめられているかのようでドキドキしてしまう。
「……ありがとう。なんか勝手なイメージだけど水戸くんって寒がりな感じしてた」
「あー…どっちかってーとそうかも」
「え?!やっぱり返すって」
「いや、なんか今はホントに寒くねーんだよ」
水戸くんは照れくさそうに笑うと言った。
「誰かさんを独り占めできて、舞い上がってるからかな」
「え?」
「ホントは今日の函館山の夜景も誘いたかったんだけど、出なかったんだよ。勇気ってやつが」
その時チラチラと白い雪が空から降ってきた。旅館の灯りに照らされたソレはとてもキレイで、寒さなんかどこかへいってしまう。というよりも、水戸くんに言われた言葉で私は寒さなんかどっかいっちゃったよ。
だけど、私はどう受け止めていいのかわからず、何も言えずにいる。
「つか、もう風呂入る時間だよな」
「あ、そうだった」
お風呂の時間は限られていて、そろそろ行かなければその時間には間に合わなくなってしまう。名残惜しいけど、この時間も終わりにしなければならない。
「実はオレ、わざとこんな時間に呼び出したんだぜ?」
「え?どうして?」
「他の奴らに見せたくねーんだよ、まなみちゃんの風呂上がり姿」
そんな事を言われたら、せっかく借りた上着が必要なくなってしまうぐらい身体が熱くなっちゃうよ。それって欲だって思っていいの?水戸くんが私に対する、独占欲だって。でもね、実は私だって同じようなこと思ってたんだよ。
「私は、見たいと思ってよ。水戸くんのお風呂上がりの姿」
「別におもしろくもなんともねーよ?」
「でも、それと同時に他の女子に見られるのは嫌って思ってた」
足元を見ると、うっすらと綿のような雪で白くなっている。水戸くんは今どんな顔をしているのかな?見たいような、見たくないような…
心の中でいろんな表情の彼を想像し、イメージトレーニングをしてから私は意を決して顔をあげた。そしてひとつの提案をする。
「だから、明日もお風呂の時間ギリギリまでこうやって散歩しませんか?」
「……賛成以外の意見はねぇな」
見た事のないような顔だった。
子供のようにクシャッとつぶれたような笑顔。こんな顔を見て彼を『怖い』なんて思う人はいるのだろうか?……いや、他の人になんて見せたくないや。
これが私の独占欲ーーーー。
まさかこの数時間後、私自身の恋バナで大盛り上がりするなんて思ってもいなかった。
「まなみちゃんいる?」
そろそろお風呂へ行こうかとみんなで準備をはじめた頃、部屋にコンコンとノックの音が響いた。「はーい」と扉から1番近かった子が開けると、1人の男子生徒が顔を覗かせた。それは水戸くんで、彼はクラスメイトでもあり私のバイト仲間でもある男子だ。そんな水戸くんがどうしてこの部屋に?しかも私をご指名?!周りはニヤニヤしながら「いるいる~」なんて言って私の背中を押し、水戸くんの元へと差し出す。
「ちょっと借りるな」
みんなにそう言って水戸くんは私を旅館の外へと連れ出した。もちろん先生に見つからないようにコソコソと。なんだかそのスリルが楽しくてちょっとだけワクワクしてしまう。旅館の外と言ってもさすがに敷地外へは出られないので、敷地内の庭を散歩する事にした…が、同じことを考えている生徒は他にもいたらしく、数名の影が見えた。それはみんな男女のペアで寄り添って歩いていて、カップルっぽい……私たちも彼氏彼女に見えるのかな?そう考えると急に心臓がドキドキしてきた。今この瞬間、私と水戸くんはクラスメイトでもバイト仲間でもない肩を寄せ合うただの男女だ。
「にしても北海道は超でけーな。今日なんてほぼ移動だけで終わったもんな」
「ね、ホントに北海道はでっかいどーだよ」
「ははっ、くだらねぇ」
彼のことを『怖い』という話を周りからよく聞くがある。確かに見た目だけで判断するとリーゼントがバッチリきまっていて超ヤンキーだし、一緒につるんでいる友達もヒゲを生やしていたり、パンチパーマだったり、金髪だったり、極めつけは真っ赤な髪の毛の人だったりとあまり関わりたくないような見た目をしている連中だ。それでも水戸くんとバイト先が偶然同じになって、彼のことをよく知るようになってからは『怖い』なんて思うことはなくなっていた。全くね。
「ワルい、なんか思ったより寒かったな」
困ったように笑って、水戸くんは白い息を吐く。
ほら、全然怖くない。むしろ優しいんだよ。
11月の函館は偶然にも今日初雪が降ったとの事、雪を見れたのは嬉しかったけれど…ごめんなさい。北海道の冬、なめてました。想像の倍は寒くて、私は自然に自分の身体をぎゅっと抱きしめていた、一気に冷えた身体を暖めるかのように。上着は着てきたんだけどなぁ。
こんな時好き合ってる男女は手を繋いだりするの?身を寄せあって少しでも寒さから逃れようとするの?なんて事を考えているとポッポと顔が熱くなってきた気がする。するとバサッと私の肩に何かが被さった。被さったまま手で触ると、それは水戸くんが着てきていた上着だった事がわかった。
「え?!いいよいいよ!水戸くんだって寒いじゃん!」
「大丈夫だって」
寒いのは2人とも同じ、さすがにコレは申し訳なさすぎるよ。それなのに水戸くんはニッと笑い、私が返そうとした上着を再度肩に被せ、ポンポンと手を乗せた。
そのしぐさはまるで、前から抱きしめられているかのようでドキドキしてしまう。
「……ありがとう。なんか勝手なイメージだけど水戸くんって寒がりな感じしてた」
「あー…どっちかってーとそうかも」
「え?!やっぱり返すって」
「いや、なんか今はホントに寒くねーんだよ」
水戸くんは照れくさそうに笑うと言った。
「誰かさんを独り占めできて、舞い上がってるからかな」
「え?」
「ホントは今日の函館山の夜景も誘いたかったんだけど、出なかったんだよ。勇気ってやつが」
その時チラチラと白い雪が空から降ってきた。旅館の灯りに照らされたソレはとてもキレイで、寒さなんかどこかへいってしまう。というよりも、水戸くんに言われた言葉で私は寒さなんかどっかいっちゃったよ。
だけど、私はどう受け止めていいのかわからず、何も言えずにいる。
「つか、もう風呂入る時間だよな」
「あ、そうだった」
お風呂の時間は限られていて、そろそろ行かなければその時間には間に合わなくなってしまう。名残惜しいけど、この時間も終わりにしなければならない。
「実はオレ、わざとこんな時間に呼び出したんだぜ?」
「え?どうして?」
「他の奴らに見せたくねーんだよ、まなみちゃんの風呂上がり姿」
そんな事を言われたら、せっかく借りた上着が必要なくなってしまうぐらい身体が熱くなっちゃうよ。それって欲だって思っていいの?水戸くんが私に対する、独占欲だって。でもね、実は私だって同じようなこと思ってたんだよ。
「私は、見たいと思ってよ。水戸くんのお風呂上がりの姿」
「別におもしろくもなんともねーよ?」
「でも、それと同時に他の女子に見られるのは嫌って思ってた」
足元を見ると、うっすらと綿のような雪で白くなっている。水戸くんは今どんな顔をしているのかな?見たいような、見たくないような…
心の中でいろんな表情の彼を想像し、イメージトレーニングをしてから私は意を決して顔をあげた。そしてひとつの提案をする。
「だから、明日もお風呂の時間ギリギリまでこうやって散歩しませんか?」
「……賛成以外の意見はねぇな」
見た事のないような顔だった。
子供のようにクシャッとつぶれたような笑顔。こんな顔を見て彼を『怖い』なんて思う人はいるのだろうか?……いや、他の人になんて見せたくないや。
これが私の独占欲ーーーー。
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