無口なヤキモチ妬き屋
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私の彼氏は無口だ。
私以外の人物と話しているのをほとんど見たことがない。が、声をかけられているのは山ほど見たことがある。その度に無口な彼は「うす」とか「おー」とかしか答えてないけどね。
実は私の彼氏は学校一の有名人と言っても過言ではない。
彼氏の名前は流川楓。バスケ部で学校一イケメンと言われ、超絶バスケがうまい有名人なのです。
そんな彼とのお付き合いは中学生の時からで、その時から楓は有名人だったけど、高校に入って更にその有名度は増した気がする。
「楓」
4時間目の授業を終えた私は楓のクラスである10組へ行き、名前を呼びながら寝ている彼の肩をゆする。これが毎日のルーティン。
「くぁぁ…」とあくびをして、目をシパシパさせながら楓はようやく目を覚ます。
そして平均的な男子高生よりも大きな身体を起こし、席を立つ。
「ほら、早く行こ」
「腹減った」
「てか楓さ、起きてる授業あんの?」
私の質問に楓は「うーん」と少し考えた後「ねぇかも」と答える。私は苦笑いをするしかない。
そんな会話をしながら私たちは廊下を歩く。そしてひとつの部屋の前で止まり、私は持っていた鍵を出して、ドアの鍵穴にそれをさした。
ガチャりと音を立てて開いたのは、私が所属している部活の部室のドアだ。
毎日ここで私たちはお弁当を食べている。
私たちはクラスも違うし、お互いに部活をしている身なので、普段なかなかデートもできないので、2人でこうしてお弁当を食べる時間を大切にしていた。最初のうちは屋上や、中庭で食べていたのだが…なんせギャラリーの目が痛い。チクチクと刺さるような視線はなんとも言えないぐらい痛いものだ。それだけ楓はここ湘北高校で知らない人はいないほど有名人という事。
それがちょっとしんどい時もある、と以前部長に話をすると「贅沢者め」と私を睨んだあと「じゃあ部室使いなよ」と言って部長は私に昼休みだけの使用許可をくれたのだ。
部長の優しさには感謝でいっぱいだから、足を向けて寝られないな。
「そういや今日さ」
私がお弁当を広げ楓に話しかけたその時、ガチャりと部室のドアが開いた。
「あ、ちょっとだけ入らせてな」
そう言って片手を顔の前で「ごめん」とジェスチャーをしながら入ってきたのは1つ年上の男の先輩部員だった。先輩はガサゴソと部室の中の机の中をあさり「あったあった」と言って漫画の本を取り出した。そして足早に部室から出て行こうとしたのだが、手に持っていた漫画を見た私は思わず声をあげた。
「あ!!それ私まだ読んでないやつ!」
「あれ、そうだっけ?じゃあ貸す?」
先輩は手に持っていた漫画を渡してくれる。実はこの漫画は部活内で流行っていて私は続きを楽しみにしており、今すぐにでも借りたかったのだ。そして先輩と漫画話で盛り上がってしまった。ほんの数分だったが、その間の時間私は楓の存在を忘れてしまっていた。いや、忘れていた訳ではないんだけど……正確に言うと『気にも止めていなかった』が正しいかな。
「じゃあまた部活でな」
先輩が部室から出て行き、私は背を向けていた楓に方向転換をする。すると楓はお弁当箱の蓋を閉めて片付けているところだった。
「え?!もう食べ終わったの?!」
私は驚きながら楓の隣に座る。
ここにある机の幅は大きめで、向かい合わせに座ると距離が遠くなってしまうのでいつも隣に座るのだ。
「いただきまーす」
私がお弁当を食べ始めようとすると、楓は机に突っ伏して寝に入った。
……確かにいつもお弁当を食べ終わったあとに楓は昼寝をするのだが、いつもは少しだけ話をしたり、、、その…あの……き、キスをしたりしてから寝る。それなのに今日は何も言わず、何もせず、そのまま寝に入る楓。
……これは、ふてくされてますな?
さっき先輩と話し込んだのがまずかったか。
楓はなかなかのヤキモチ妬き…というか独占欲が強い。それだけ愛されている証拠なのかもしれないが、たまぁに参ってしまう時もある。
もちろん嬉しい時もあるけどね。
「ほら!楓!楓が好きなおかず入ってる。あげるよ」
普段食べ物に釣られるイメージはない楓だが、藁にもすがる思いで私は机に突っ伏している楓の肩をゆする。ーーーと、楓はゆっくりと顔をあげた。
釣れた!!!!
私がニコニコしながらそのおかずを箸でつまんだまま楓の顔に向けていると、楓は私の手首をガシッと掴む。
はいはい、あーんしろって事ね……そう思っていたのに、楓が顔を近づけたのはおかずではなく、私の顔だった。
そして私たちの唇はそのまま触れ合う。
「……足りねぇな」
楓はそう言うと私の後頭部を手で包みこみ、座ったまま身体を引き寄せ何度もキスをしてくる。
息が漏れてしまうほどのキスをーー。
ひとしきり私の唇を堪能した楓はようやく私からそっと離れる。
「オレが好きなのはまなみだ」
…………私の彼は無口なヤキモチ妬き屋です。
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