Dog's feeling

まさか自身の頭に付けるのでは、と驚きを通り越して恐怖さえ覚えそうになったツナに……そのふわふわした頭に、やはり黙ったまま被せたのだった。ザンザスが身に付けるのも考えられないが、自分だとも思っていなかったツナは素っ頓狂な声を上げてしまう。

だが、ザンザスは何とも可愛らしい猫耳を付けたツナをしばらく眺めると、

「……フン」

一度だけ鼻を鳴らして踵を返したのだった。どこか満足したようにも見える。

(……分からない!全っ然分からない……!)

それまでも分からなかったザンザスの気持ちが、さらに理解不能になるツナであった。
それから、本当は恥ずかしくて嫌だったのだが、ザンザスが怒ると怖いので……結局、猫耳を付けた過ごすことになる。


***


それから二人は、いろんなことがありながらも(大変な想いをするのは全部ツナだが)広いパーク内を一日かけてほぼ全て回った。

ザンザスは、お化け屋敷で仕掛を炎で燃やそうとしたり、シューティングのアトラクションでは自分の本物の銃を使いそうになったり……さらには数十メートル毎に警備員に呼び止められてぶちギレそうになったりして、その度にてんやわんやするツナはヘトヘトだった。

(でも…楽しかったな……)

ザンザスの強面のおかげで短時間でたくさんのアトラクションを回れたし、それまでの厳しい修行のことなど忘れるほど思い切り遊ぶことができた。

(ザンザスも…楽しかったかな……?)

何となくゆったりしたい気分になって、ツナは最後に巨大観覧車に乗った。ザンザスは嫌がるかと思ったが、何も言わずに付いてきてくれた。

向かい合わせに座りながら、窓の外を眺めるザンザスをついうかがってしまう。

そもそもここへはザンザスが来たくて、ついでにツナを連れてきたのだろうとツナは思っている。ずっと無口で表情も変えなかったが(良くキレてはいたが)楽しかったのだろうか、と。
顔には表れないだけで、本当は嬉しかったのだろうか……気になって、ツナは思わず口を開いていた。

「ザンザス…今日、楽しかった……?」
「あ……?」

案の定睨まれてしまったが、さほど不機嫌ではない様子で。ツナは、その整った顔を上目遣いで覗き込んだ。

ザンザスは、しばらくこちらを見つめたまま黙っていたが、

「……てめぇは」
「え……?」
「てめぇは、どうだったんだ」

逆に問い返されてしまって、ツナは目をしばたかせる。何故、自分のことを聞くのだろうか、と。
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