Dog's feeling

いや、良く考えれば彼はただの人ではなくマフィアの人間だから、ちゃんと説明されたらそれはそれで問題なのだが……結局、すぐに銃を出そうとするザンザスを必死で抑えて、警備員も無理やり納得させて、ツナはどっと疲れるのだった。

(でも……)

思わずザンザスの手をつかんで早足でその場を離れながら、ふと思う。

(もし、外国語が話せたら…俺、ザンザスのこと何て説明したんだろ……)

友達?仲間?……少なくともザンザスはそんなこと思っていないだろうし、周りからもそうは見えないだろう。
何故なら、年齢も国籍も職業も違う。本当なら、出会うこともこうして一緒にいることもない人間なのだから。

しかもつい最近までは敵対していて、命をかけて戦った訳で。それが、今では男同士なのに身体を重ねる仲でもあって……本当に、自分達の関係は変わっている。

(俺達って…ひょっとして……)

頭に浮かんだ言葉に、ツナはかぁぁと頬を染めた。イタリア語が話せたとしても、そんなこと決して口には出せそうにない。

第一、あのザンザスがそんなことを思っているなんて考えられなくて。

(ザンザスは…どう思ってるんだろう……)

すると、

「ぇっ……?」

それまで大人しく手を引かれていたザンザスが、不意に立ち止まると違う方向へ向かって歩きだした。ツナは慌ててその後を追う。

「ど、どしたのザンザス?何かあった?」
「………」

乗りたいアトラクションでもあったのだろうか……尋ねるも返事はない。

やがてザンザスが足を止めると、

「ん……?」

そこは小さな広場のようになっていて、いくつかの露店が並んでいた。飲み物やポップコーンなど、テーマパークでは定番のものが売られている。

そしてザンザスが足を止めたのは、とある一つの店の前だった。

それは、

「え……」

……この遊園地の、イメージキャラクターのぬいぐるみやストラップなど、グッズを売っている店で。

(……そ、そういうのが欲しかったの!?)

ツナは、うっかり突っ込みそうになった。だが、ザンザスは真剣な表情でじっと商品を見て(睨んで)いる。

やがて、

「………」
「!!?!」

黙って手にしたのは……真っ白でふわふわの毛を使用した、何とも可愛い……猫の耳のカチューシャで。

「………!」

衝撃すぎて、ツナは最早声も出ないようである。

だがそんなツナを気にすることなく、ザンザスは少し怯えたような店員にお金を払うと、

「……へ!?」
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