Dog's feeling

突然ここへ連れてこられて、勝手に屋敷を抜け出したためリボーンには後で酷く怒られるだろう。だが、せっかくザンザスが誘ってくれたのだし、自分も遊園地で遊べるのは嬉しいから……ツナは、わくわくしながらザンザスの後を追ったのだった。


とんでもなく大変なデートになることも知らないで。


***


チケットを購入してアーケードを抜けると、夏のバカンスの時期だからか、中はかなりの人で溢れ返っていた。はぐれないように、ツナはなるべくザンザスにくっ付いて歩く。

「ザンザス、何に乗りたい?」
「……あ゙?」
「ぁっ……じ、じゃあジェットコースター!俺、あのジェットコースターに乗りたいな!」

ここへ来たかったのはザンザス、という風に言うのはまずいのだろう。低い声で返されて、ツナは慌ててすぐ向こうに見えるアトラクションを指差した。

こうなったら、ツナがリードして回った方が良さそうだ、と。ザンザスならゆったりとした乗り物よりも、スピードのあるものの方が良いだろう、と想像して。

咄嗟に選んだ絶叫マシンは、かなりの高さから一気に急降下したり何回転もするいかにも怖そうなものだったが、恐らく大丈夫だろう。今まであまり恐すぎる乗り物は苦手なツナだったが、先ほどここへ来るまでにもっと怖くて激しい体験をさせられたのだから。

そのアトラクションのゲートへ向かうと、大勢並んでいる列の最後尾へ向かった。
だが、さすがは夏期休暇中の客が集まるテーマパーク。長蛇の列を見るに、かなりの時間を待たなければならないだろう。

(何か会話しないと気まずいなぁ……)

話題を探さなければ、とツナが懸命に考えて、数分ほど経った時だった。

「……ウゼェ」
「へ?」

急に、ザンザスが低い声でそう言ったのは。見上げると、かなり不機嫌そうな顔をしていて。

「……カッ消す」
「ちょちょちょ待ったぁぁっ!」

そしていきなり懐から銃を取り出したので、ツナは悲鳴を上げてその身体にしがみ付いた。どうやら、もう待つことに我慢ができなくなったらしい。

(気ぃ短っ…!)

並び始めて、まだ数分しか経っていないというのに。だが、これまでのザンザスの暮らしぶりや性格を考えれば無理もないかもしれない。

どうすれば、とツナが頭を抱えた時、

『あ、あのっ…どどどどうぞ…!』
「え……」

異国の言葉なので何と言ったのか分からないが、ツナ達の前に並んでいたカップルらしき二人が、何故か前を譲ってくれた。
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