オモテウラ
悪夢のような継承式の後、ツナはしばらく熱が下がらず、一日以上深い眠りに就いた。そして、目が覚めると……彼は、その時のことを覚えていなかった。
あまりのショックに記憶から消してしまったのか、それとも九代目の手によるものか……残された脇腹の刻印も、覚えがなくて奇妙に思うだけだった。
仲間や周囲の人間も、特に変わった様子はなかった。だが、継承式の前よりも……ツナと深く関わるようになったかもしれない。優しく、密接に、親愛の情をもって……どこか、監視するかのような視線で。
「い、やだ……俺……俺っ……!」
「やれやれ。しばらく症状が出なかったから、少しは落ち着いたかと思ったら、これか」
「ぁっ……!」
全てを思い出し、パニックを起こすツナの身体を引き起こすと、リボーンは乱暴にベッドへ放り投げた。暴れようとする身体を簡単に押さえ付けて、動けないようにする。
ツナの記憶は、完全に消えた訳ではなかった。身体が疲弊した時、深く思い悩んだ時、土地の念に強く触れた時……少しずつ記憶が蘇って、やがて今日のように爆発してしまうのだ。
それは、ツナがボスである自分の存在意義に疑問をもてばもつほど……ボスから、ボンゴレから逃げ出そうとすればするほど、鮮明にフラッシュバックしてしまう。
「おい、ダメツナ」
「ぅぁっ……!」
細い身体にのしかかったまま、リボーンはツナの顎を強くつかむと顔を向けさせた。琥珀の瞳は今にも正気を失いそうなほど不安気に揺れ、リボーンに助けを求めている。
「何度も言うが、お前はヒーローになんてなれねーんだ」
「っ……」
「ボスに相応しいとか相応しくないとか、くだらねぇこと考えんな。仲間と一緒にいたいのが本音なら……ボスであり続けろ」
リボーンの言葉が、重く頭に響き渡る。ぐらぐらと不安定だった鎖のようなものに、再びキツく締め上げられるようだった。
(俺の……本音……)
ボスになりたくないのも、仲間と一緒にいたいのも本音だ。だが、仲間と離れるのが怖くてボスであり続けるのは、本当に正しいことなのだろうか。
けれど、自分を絡め取るリボーンの言葉に、視線に、自分の中を流れる恐ろしいものに……ツナは自分の意志が、望みが、奥底に深く沈んでいくのを感じた。
「まぁ、どちらにせよ逃さねぇけどな。アイツらも……俺も」
「っ、ぁ……」
その言葉を頭で理解する前に……ツナは意識を失っていた。糸の切れた人形のように、ベッドに力なく手足が投げ出される。
こうしてまた、あの時の記憶は頭の奥底に、胸の奥深くに眠ってしまうのだ。これまでも、そうであったように。
あまりのショックに記憶から消してしまったのか、それとも九代目の手によるものか……残された脇腹の刻印も、覚えがなくて奇妙に思うだけだった。
仲間や周囲の人間も、特に変わった様子はなかった。だが、継承式の前よりも……ツナと深く関わるようになったかもしれない。優しく、密接に、親愛の情をもって……どこか、監視するかのような視線で。
「い、やだ……俺……俺っ……!」
「やれやれ。しばらく症状が出なかったから、少しは落ち着いたかと思ったら、これか」
「ぁっ……!」
全てを思い出し、パニックを起こすツナの身体を引き起こすと、リボーンは乱暴にベッドへ放り投げた。暴れようとする身体を簡単に押さえ付けて、動けないようにする。
ツナの記憶は、完全に消えた訳ではなかった。身体が疲弊した時、深く思い悩んだ時、土地の念に強く触れた時……少しずつ記憶が蘇って、やがて今日のように爆発してしまうのだ。
それは、ツナがボスである自分の存在意義に疑問をもてばもつほど……ボスから、ボンゴレから逃げ出そうとすればするほど、鮮明にフラッシュバックしてしまう。
「おい、ダメツナ」
「ぅぁっ……!」
細い身体にのしかかったまま、リボーンはツナの顎を強くつかむと顔を向けさせた。琥珀の瞳は今にも正気を失いそうなほど不安気に揺れ、リボーンに助けを求めている。
「何度も言うが、お前はヒーローになんてなれねーんだ」
「っ……」
「ボスに相応しいとか相応しくないとか、くだらねぇこと考えんな。仲間と一緒にいたいのが本音なら……ボスであり続けろ」
リボーンの言葉が、重く頭に響き渡る。ぐらぐらと不安定だった鎖のようなものに、再びキツく締め上げられるようだった。
(俺の……本音……)
ボスになりたくないのも、仲間と一緒にいたいのも本音だ。だが、仲間と離れるのが怖くてボスであり続けるのは、本当に正しいことなのだろうか。
けれど、自分を絡め取るリボーンの言葉に、視線に、自分の中を流れる恐ろしいものに……ツナは自分の意志が、望みが、奥底に深く沈んでいくのを感じた。
「まぁ、どちらにせよ逃さねぇけどな。アイツらも……俺も」
「っ、ぁ……」
その言葉を頭で理解する前に……ツナは意識を失っていた。糸の切れた人形のように、ベッドに力なく手足が投げ出される。
こうしてまた、あの時の記憶は頭の奥底に、胸の奥深くに眠ってしまうのだ。これまでも、そうであったように。