オモテウラ
その時だった。
「ツナ」
リボーンの声音が、それまでと一変したのは。その声に、それまで塞き止められないまま感情を溢れさせていたツナが、不自然なほどビクリと身体を跳ねさせる。
そして次の瞬間には、支えを失ったかのように床にへたり込んでいた。リボーンが、座ったまま軽くツナの足を払ったのだ。
衝撃に、また傷口がズキズキと傷む。同時に、頭の痛みも。
「お前、まだ教育が足りねぇみたいだな」
「っ……」
「あの時のこと、また忘れたのか?」
リボーンの声は低く静かで、だが有無を言わせないような圧力が感じられた。ボルサリーノから覗く視線は鋭く、ツナは不安気な様子で見上げる。
「あ、あの時……?」
「継承式のことだ」
「継、承式……」
その言葉を聞いた瞬間、どくりと大きく胸が波打った。
まただ。また継承式だ。
何故みんな、そろって継承式のことを口に出すのだろう。あの時、特別に変わったことはしなかったはずだ。
何度思い出してみても、九代目から継承の言葉と、ボンゴレの至宝と呼ばれる小さな箱を受け取っただけで、
(え……?)
不意に、いつもならそれ以上思い出せない記憶が、別の映像に変わっていった。薄暗い空間、そこに集まった限られた人間。
継承式と似ているが、漂う雰囲気が全く違う。
(何だ、これ……いや、しってる……)
これまでに何度か、夢で見たような気がする。だが、ただの夢だったはずの映像が、過去に本当に起こった出来事のような……頭の奥で眠っていた何かが、急に外へ出ようと蠢いているような感覚がして、ツナは頭を押さえた。
痛い。頭が割れるように痛い。全身が熱く、下腹部が……脇腹の古傷が、じんじんと熱をもって疼き始める。
視界がぐらついて倒れそうになったところを、リボーンに顎をつかまれ上を向かされた。
「泣き言ほざく前に、あの時のことを思い出してみろ。本当の、継承式のことを」
「ほんとう、の……」
(嫌だ……思い出したくない……)
無意識に、ツナはそう思っていた。
何故なのか、はっきりとは分からない。ただ本能的に、その記憶を呼び起こしては駄目だという直感が働いたのだ。
思い出したら、何かが崩壊する……そんな気がしてならない。
だが、リボーンはそれを許さなかった。
「忘れてるなら、思い出させてやろうか」
「い、嫌だ……やだ……リボーン……」
聞いたら駄目だ、そう分かっているのに、ツナはリボーンから視線をそらすことも、身体を動かすこともできなかった。
心臓がどくどくと脈を打ち、身体が大きく震える。
「あの時……」
「っ……」
リボーンから告げられた言葉に、ツナは全てを思い出した。そして、頭の中が真っ白に染まった。
***
「ツナ」
リボーンの声音が、それまでと一変したのは。その声に、それまで塞き止められないまま感情を溢れさせていたツナが、不自然なほどビクリと身体を跳ねさせる。
そして次の瞬間には、支えを失ったかのように床にへたり込んでいた。リボーンが、座ったまま軽くツナの足を払ったのだ。
衝撃に、また傷口がズキズキと傷む。同時に、頭の痛みも。
「お前、まだ教育が足りねぇみたいだな」
「っ……」
「あの時のこと、また忘れたのか?」
リボーンの声は低く静かで、だが有無を言わせないような圧力が感じられた。ボルサリーノから覗く視線は鋭く、ツナは不安気な様子で見上げる。
「あ、あの時……?」
「継承式のことだ」
「継、承式……」
その言葉を聞いた瞬間、どくりと大きく胸が波打った。
まただ。また継承式だ。
何故みんな、そろって継承式のことを口に出すのだろう。あの時、特別に変わったことはしなかったはずだ。
何度思い出してみても、九代目から継承の言葉と、ボンゴレの至宝と呼ばれる小さな箱を受け取っただけで、
(え……?)
不意に、いつもならそれ以上思い出せない記憶が、別の映像に変わっていった。薄暗い空間、そこに集まった限られた人間。
継承式と似ているが、漂う雰囲気が全く違う。
(何だ、これ……いや、しってる……)
これまでに何度か、夢で見たような気がする。だが、ただの夢だったはずの映像が、過去に本当に起こった出来事のような……頭の奥で眠っていた何かが、急に外へ出ようと蠢いているような感覚がして、ツナは頭を押さえた。
痛い。頭が割れるように痛い。全身が熱く、下腹部が……脇腹の古傷が、じんじんと熱をもって疼き始める。
視界がぐらついて倒れそうになったところを、リボーンに顎をつかまれ上を向かされた。
「泣き言ほざく前に、あの時のことを思い出してみろ。本当の、継承式のことを」
「ほんとう、の……」
(嫌だ……思い出したくない……)
無意識に、ツナはそう思っていた。
何故なのか、はっきりとは分からない。ただ本能的に、その記憶を呼び起こしては駄目だという直感が働いたのだ。
思い出したら、何かが崩壊する……そんな気がしてならない。
だが、リボーンはそれを許さなかった。
「忘れてるなら、思い出させてやろうか」
「い、嫌だ……やだ……リボーン……」
聞いたら駄目だ、そう分かっているのに、ツナはリボーンから視線をそらすことも、身体を動かすこともできなかった。
心臓がどくどくと脈を打ち、身体が大きく震える。
「あの時……」
「っ……」
リボーンから告げられた言葉に、ツナは全てを思い出した。そして、頭の中が真っ白に染まった。
***