オモテウラ

薄暗い部屋の中では、部下から教えられた“来客”が、ツナのベッドに鷹揚に腰掛けて待っていた。漆黒のボルサリーノにマフィアスーツ、すらりとした足を組んで面白そうにこちらを眺めているのは……最強のヒットマンであり、ツナの元家庭教師であるリボーンだ。

ツナがボスを継いでからも、リボーンは時々ボンゴレのアジトを訪れていた。気まぐれに顔を出してはツナをからかったり、物理的に叱咤激励したりと、好き勝手やって帰っていく。

もちろん、ツナからリボーンに何かを依頼をすることもあれば、その逆もある。いわゆるビジネスパートナーだが、互いに家庭教師と教え子という昔の関係からあまり変わっていなかった。

そんな家庭教師の姿を久しぶりに見て、ツナは素直に嬉しい気持ちと、今の自分の状態を見てリボーンはどう思うだろう、という不安な気持ちでいっぱいだった。

「獄寺から聞いたぞ。ヘマしたらしいじゃねぇか」
「…………」
「全く、いつまで経ってもダメツナは変わらねぇな」

いつもなら言い訳を言ったり、何かを言い返したりしただろう。だが今はそんな余裕もなくて、ツナは無意識にリボーンの方へフラフラと近付いていった。
吸い寄せられるように、縋るかのように歩み寄ると、泣きそうな様子で顔を歪める。

「それだけじゃないんだ……」
「…………」
「いつも、一人じゃ何もできないし、みんなにやってもらってばっかりで……」

一度話し始めると、これまで一人でぐるぐると頭を悩ませていたことが、溢れた水のように出てきてしまう。守護者や部下には話せない、リボーンだからこそ話してしまうのかもしれない。

鬼の家庭教師にこんなことを言っても、仕置きされるのは分かっているのだが構わなかった。むしろ、それを求めているのかもしれない。

「間抜けな面して情けねえこと言ってんじゃねぇぞ。それでもドンボンゴレか」
「だって……!そもそも、俺がマフィアのボスなんかできる訳ないんだよ!始めから、ずっと、無理だったんだ……!」

最後は、かつて自分をボスにするためにやって来たリボーンを責めるかのように、声を荒らげてしまう。最後にボスになることを選択したのは自分なのに、他人のせいにする自身に嫌気が差した。

それでも、ツナの勢いが止まることはない。いつものようにリボーンにぶん殴られようが蹴られようが、もうどうでもよかった。

「なんでっ、みんな……俺を尊敬してるとか、憧れてるとか……そんなこと言えるんだよ……!」
「おい、ツナ」
「やっぱり、俺なんかがボスであるべきじゃないんだ……もう、止めよう……やめないと……」
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