オモテウラ

それでも、有事の時にはツナ達と連携し、協力することができていた。ザンザスが、ツナに対して何を思っているのかは、誰にも分からないが……

(もし、今また、ザンザスがボンゴレのボスになろうとしてるんだったら……いっそのこと……)

考え事をしているのと、怪我の痛みでいつもより気が散っていたのかもしれない。ツナは無防備に一歩、もう一歩とザンザスに近付いた。

その時、ずっと目を閉じていたザンザスが、じろりとツナの方を睨んだ。薄暗い部屋の中で、鋭い光を放つ紅い瞳に少しビクリとする。
それでも、相変わらず黙ったままその場に留まっているため、ツナは躊躇いながらも口を開いた。

「えっと、急にごめん。話があるんだけど……」

だが、全て言い終わらないうちに……いや、言い終えることはできなかった。

「え……っ、いだっ!」

じっとしていたザンザスが、何かに反応したかのようにピクリと身体を動かしたと思ったら、次の瞬間には目の前まで迫っていたからだ。距離を取ろうとする前に、胸ぐらをつかまれて先ほどまで彼が座っていたソファに放り投げられる。

身体をぶつけたことで傷に鋭い痛みが走り、ツナは思わず声を上げた。

「いったぁ……い、いきなり何……」
「…………」
「って、ちょっ……待って……!」

起き上がることは許されず、ザンザスはツナの身体を押さえ付けると、乱暴にネクタイを引っ張りシャツの前を開いた。
ボタンがいくつか取れてしまったかもしれない。ぶちりと嫌な音がした。

現れた細い上半身……ツナの左肩には、キツく包帯が巻かれている。ザンザスは鋭い視線のまま、その怪我の辺りを睨んでいた。
いつの間にか(恐らく今身体をぶつけた衝撃が原因だろうが)傷口が開いてしまったようで、じんわりと血が滲んできている。

何をしようとしているのか分からなくて、ツナはただ不安そうにザンザスを見上げた。抵抗しないのは、単純に怖いからできないということもあるが、彼から殺気が感じられなかったからだ。
いや、射殺されそうなほどの視線で睨まれてはいるのだが。

こんなに間近でザンザスを見ることなど滅多にない。年々鋭さを増していく彼に、やはりボスに相応しいのは彼なんじゃないか、と……ツナは呑気なことを考えて、思わず困ったように眉を下げた。

すると、

「っ、いっ!?痛い痛い痛い!」

より不機嫌そうに眼光を強めたザンザスの顔が、どんどん迫ってきたかと思ったら……肩の、まさに怪我をして血が滲むそこに思い切り噛み付かれた。傷口に歯が食い込む鋭い痛みに、ツナが悲鳴を上げる。
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