オモテウラ

骸は、裏の社会で知らない者はいない、と言われるほどの要注意人物として扱われている。また、誰もが振り返るような容姿をしているため、幻術で平凡な男に変装する必要があった。

ツナも、超巨大マフィアのボスであるため、同じくらい用心しなければならないはずだが……

「たまに出かける時くらい、楽な服が着たいし」

その格好は、ラフなパーカーにゆったりとしたパンツという、何とも緩すぎるものだった。もちろん、顔もそのままだ。

スーツを着ている時でさえ幼く見えるのに、私服で外をウロウロしていると、ただの日本からの留学生にしか見えないらしい。そのため、他の人間に気付かれることはほとんどなかった。

今も護衛の姿が見えないだけで、少し離れた所から誰かしら見守っているし、ツナの位置や行動は必ず把握されているのだが……それにしても、マフィアのボスらしからぬ行動と待遇だろう。

「やれやれ……では、さっさと終わらせますよ。僕も暇ではないんでね」
「とか言って、ちゃっかりチョコレートパフェ頼んでるじゃん……」

このように、いつも軽いやり取りをしてから、ツナ達は本題に入るのだった。

骸の情報は怖いくらい的確だ。抗争の火種になりそうなものがある時、ファミリーや近くの住民に危害が加えられそうな時など、事前に察知して教えてくれる。時には、黒曜のメンバーだけで知らない間に処理してくれることもある。

元々守護者の自覚がないどころか、ツナの身体を乗っ取ってマフィアを殲滅するという目的は消えていないはずだ。だが、何だかんだ言いながら助けてくれる骸のことを、ツナは今では信頼し感謝もしていた。

「この間も言っていた北の……例の中小マフィアですが、やはり不穏な動きをしているようです。早めに対処した方が良いんじゃないですか」
「そっか……なるべく穏便に済ませたいんだけどなぁ」
「呑気なことを言っていると痛い目を見ますよ。まぁ、僕の知ったことではありませんけど」

いくら平和になってきたと言っても、ボンゴレだからこそ今までの確執はそう簡単に消えるものではない。対処しても対処しても生まれる問題に、ツナはため息を吐いた。

それから、どのくらい話していただろうか。

「……そろそろ時間のようですね」
「えぇー、もう?」

近くで身を隠していた仲間から合図を受け取ったのであろう、骸はそう言って立ち上がった。だが、仕事に戻りたくないツナはその場で渋っている。

「はぁ、ずっとここで休憩できたらいいのになー」
「何を子どもみたいなことを……」
「いや、サボりたいのもそうなんだけど……何かここって、いつもつい来ちゃうんだよな」
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