オモテウラ

先ほどから、雲雀はおかしなことを言う。だが、その視線や表情は冗談を言っているようには見えず、何か鋭いものを帯びているようで……ツナは何も言えなかった。

その後、頃合いを見計らったかのように現れた草壁の仲裁もあり、地下アジトの話は何とか終えることができた。ただ、ツナは雲雀に言われた言葉がずっと頭から離れず、なかなか集中することができなかった。

そしてその夜は、久しぶりに実家でゆっくり過ごすことができたのだが……眠りに就いて見た夢は、この間と同じ継承式の映像だった。それも、以前よりはっきりしていたように思う。

ただ、それは微かな記憶に残る継承式と少し違っていた。よく似ているし、場所も同じなのだが……何かが違うのだ。

雲雀が言っていた炎も、確かに見えたような気がした。だが、それ以上よく見ようとしたり、考えようとしたりすると……映像は急に靄がかかったように見えなくなり、ノイズが生まれて何も聞こえなくなってしまうのだ。

そして相変わらず、目が覚めると……頭痛や身体の怠さを残したまま、一体何の夢を見たのか、ツナは忘れてしまうのだった。


***


ボンゴレ本部から程よく近い、イタリア郊外にある街。そこそこ住民も多く活気のある、だがのんびりとした街の一角に位置するカフェテリア。

店先のテーブル席で、ツナはオレンジジュースを飲みながら、ぼんやりと通りの人の流れを眺めていた。

ちなみに、一人ではなく……席の向かい側には、目立たない近隣住民といった風貌の、同い年くらいの男がいる。

「……君ね、毎回同じ店を選んで、敵にマークされたりとか考えないんですか」
「えー?逆に、いつものお気に入りの店っていう感じにしとけば怪しまれなくない?」
「やれやれ、仮にもマフィアのボスが安易な」

ただ、その口調や声音はあまり見た目とは合っていなかった。それもそのはず、目の前にいる男は、実は幻術で姿を変えた霧の守護者……六道骸だったからだ。

骸は、他の守護者以上にボンゴレの本部に来ることが少ない。というか、滅多にない。

普段は黒曜のメンバーと世界中を飛び回っているため、ツナでさえ骸がどこで何をしているのか分かっていないのだ。ただ、定期的に街の片隅で会っては、互いに情報交換をしていた。

「しかも、ろくに護衛を付けず無防備な格好で、よくフラフラできますね」
「いや、だって、意外とこの方が目立たないんだよな……」

幻術を使ってまで変装する骸と、全く姿を隠そうとしないツナは果てしなく正反対だった。
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