オモテウラ

特に、今日もダメっぷりを発揮していたせいか、どうしてもランボが言っていた継承式のことが引っかかってしまう。

強烈に印象に残っているはずの継承式の記憶は、今では曖昧なものになっていた。了平もランボも褒めてくれてはいたが、果たして本当なのだろうか……ただ、二人とも嘘を吐いているようには見えなかった。

二人だけではない。そういえば守護者や部下達は、時おり継承式の時のことを話題に出す。
内容は了平達と一緒で、立派だったとか、素晴らしいものだったとか、そういう話だが……その度に、ツナは不思議に思うのだった。

あの時、自分は……

「……っ、う」

まただ。ずきりとした痛みに、ツナはまた頭を押さえた。

最近やけに頭痛が多い。やはり、忙しさと寝不足が原因だろうか……何も考えたくなくなって、ツナは今日もすぐに眠りに就いたのだった。

そして、また夢を見た。昼間に継承式の話をしたからか、内容はその時の光景が見えたような気がする。

ただし、その映像はかなりぼんやりとしていた。ボンゴレ本部の中にある、かなり広い空間。そこに集まる多くの人間と、近しい仲間達と、そして自分……

やはり、これほど仰々しく緊張に包まれた空間で、自分が何の問題もなく立ち振る舞えていたとは思えない。恐らく、仲間やボンゴレ九代目からのフォローがあったのだろう……と、ほとんどぼやけた映像を、ツナはふわふわと漂うように眺めたのだった。

朝になれば、このような曖昧な夢は、見たことさえも忘れてしまう。そしてまた、気苦労の多い一日が始まるのだ。


***


ツナの嫌な予感は的中した。

「お、落ち着いてください雲雀さん!俺、そんなつもりで来たんじゃないんですけど!」
「僕が君を咬み殺す以外にやることなんてある?」
「いやありますよ!いろいろと!」

部屋に入るなり、好戦的な視線と武器を向けられて非常に焦った。

場所は日本の並盛町。その一角にある、大きな屋敷の一室だ。

この辺りに住む人間で知らない者はいない、並盛を牛耳る並盛財団の長であり、ボンゴレ雲の守護者である雲雀恭弥の家だった。

地下アジトのメンテナンスのため、日本へ飛ぶと実家を訪れる暇もなく雲雀の元へ向かったツナ。それなのに、この仕打ちはあんまりだと思う。

ただ、雲雀には会う度に咬み殺されているので、こうなることは分かっていた。雲雀の側近である草壁など、ツナを部屋へ案内すると後はご自由にとばかりにそそくさと出ていったくらいだ。

(俺を置いていかないでください草壁さん!)
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