オモテウラ

だが他の傷跡は、時間が経てば薄くなったり、完全に消えて見えなくなったりするのに……その傷だけは、ずっとはっきりと、刻み込まれたかのように残っているのだった。

先ほどの熱と痺れは、これが原因だ。普段は痛みを感じることはないのだが、たまに疼いたり、もしくは誰かに触られた時によく分からない感覚が走ることがある。

こうして、大変な仕事で疲れた後は、頭痛や古傷に悩まされる時があった。仲間やボンゴレのことで思い悩んだ時は、特に顕著に出てきてしまう気がする。

(早く寝よう……)

ジャケットをその辺に放り投げると、ツナは雪崩れ込むようにベッドへ寝転んだ。シャワーは明日の朝に浴びることにする。

これまでは頭痛がしても、寝ればすぐに治った。どうせ明日はオフだから、ゆっくり眠って、のんびり過ごせばいいのだ、と。

「ふぅ……」

質の良いマットレスが、身体の重みでゆっくりと沈んでいく。
それと同時に、ツナの意識も深く落ちていった。

その夜、ツナは夢を見たような気がした。

内容は、そこまで明るいものではない。身近な人々が、もしくは知らない誰かが怯えているような、何かの事件や抗争の中であるかのような……怖くて悲しい雰囲気の夢だった。

たまに、ツナはそんな夢を見てしまう時がある。時には、その抗争に自分が巻き込まれたり……またある時は、そんな恐ろしい光景を永遠に見せられたりする夢を。

疲れた時に見る夢は、いつもそんな感じだった。何か思い悩んだりすればするほど、その映像はくっきりと、色濃いものになる。

だが目が覚めた時、何となく怖い夢を見たという感覚は残るものの……はっきりと内容を思い出すことはできないのだ。そして、時間が経つと微かな映像も完全に消えてしまうため、ツナは深く考えようとはしなかった。


***


休日が終わり、また忙しい日々が始まって少し経った頃……ツナの元に、日本から客が訪れていた。晴れの守護者である笹川了平と、雷の守護者であるランボだ。

「おお、元気にしていたか沢田!」
「お久しぶりです、ボンゴレ」
「二人ともいらっしゃい!」

仲間や部下に恵まれていると日々感じるツナだが、やはり十年以上前からの付き合いである人物に会える嬉しさは格別だった。了平やランボを前にして、表情や口調などがさらに幼くなったように見える。

了平は山本と同じで、プロのボクシング選手として活躍しながらボンゴレを支えていた。今回は、数日間の休暇を利用してイタリアを訪れ、ツナに近況報告しつつヴァリアーにも顔を出す予定らしい。
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