レンアイ受難曲!

だが、

「いや…ごめん、な……」
「え……?」
「あんなに格好付けておいて、結局何もできなくて……」

(やっぱり、俺ってダセェ……)

取り巻き達に、ツナの恋人だと認めさせる力もなくて、いざツナに危険が迫ると、逆に守られてしまって……剣介は自分恥ずかしくて、情けなくて仕方がなかった。
ツナだって、呆れているかもしれない、と落ち込んでしまう。

すると、

「……先輩」

ツナが、握っていた剣介の手を、自分の胸の前で包み込むようにして、

「先輩、全然格好悪くなんかないですよ」
「ぇ……」
「この怖い人達が現れた時、真っ先に俺を庇ってくれたじゃないですか」

危険を顧みず、自ら盾になって……撃たれようとする直前さえも、剣介はツナを守ろうとしていた。

「きっと俺、一人じゃどうして良いか分からなかったと思います。でも、先輩がいたから…先輩が危ないって思ったら、身体が勝手に動いて…」
「………」
「大切な人を守りたいっていう気持ちは、俺も同じなんです。だから……」

再び、ツナの瞳が遠くから届く光でキラキラと輝きだして、剣介は今度こそ吸い込まれそうになる。

「だから、先輩のその気持ちがすごく嬉しいし……格好良かったです」
「ツ、ナ……」

自然に、お互いの距離が縮まっていく。

やがて、

「先輩……大好き、です……」

ゆっくりと、重なった。

(ああ、やっぱり……)

触れるだけの、軽いキス。
でもそれは、二人にとって特別なもので。

(やっぱり、ツナにはかなわねぇよ……)

唇を離して、間近でツナの顔を見つめながら、剣介はぼんやりとそう思う。

自分がどんなに格好を付けたって、ツナはそれ以上の温もりで全て包み込んでしまう。そして逆に、その魅力にどんどん夢中になっていくのだ。

でも、もうそれで良い。格好が付かなくても、ツナと一緒にいられれば。

「それに先輩、安心して下さい!」
「ん?」
「俺、普段はダメダメだけど、好きな人のためなら強くなれるんです!」

不意に、ツナが剣介の手を握ったまま表情を輝かせた。剣介も、それにつられて笑顔になりかけて、

「だから、先輩を危険な目に遭わせる奴は、この俺が燃やして消し炭にしちゃいますっ!」
「………」

語尾にハートマークの付きそうな声音。それはむしろ小悪魔を通り越して、だが天使のような無邪気な笑顔で。

「……お、おおおおぅ……!」

剣介は、この最高に可愛らしく、最強にたくましい恋人に……絶対に強くなって、自分がツナを守ってみせる、と堅く誓ったのだった。
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