レンアイ受難曲!

「なら、沢田綱吉は……!?」

骸の言葉に、守護者達は慌てて木々の間からその向こうを覗く。

そして、

「「「………!」」」

そこに広がる壮絶な光景に、誰もが息を飲んだのだった。


***


剣介は、その場で尻餅を着いて動けなくなっていた。

「っ……ツ…ツ、ナ……」

ようやく絞りだした声は、擦れて震えている。

(お、俺は…ただ、ツナを守りたかっただけなのに……)

目の前の光景が信じられなくて、わなわなと口を震わせながら。

(なのに、何で……)

その代わりに、心の中で、





(何で、こんなことになってるんだぁぁぁっ!?)

そう、思い切り叫んだのだった。

剣介の目の前には、仁王立ちするツナの後ろ姿。そしてその周りに、白目を剥いて気絶する男達が転がっているというある意味恐ろしい光景が広がっていた。


あの後、男達が銃の引き金を引こうとして、剣介がツナを庇ったまま目をつむった瞬間……背後で何かが燃え上がるような気配がして、次の瞬間には一番前にいた男が吹っ飛んだ。驚いて目を見開く剣介の前には、いつの間にか薄茶色の髪に小柄な身体をした……自分が良く知っているはずの少年がいて。

だが、その雰囲気は今までとまるで違っていたのだ。

そして剣介が固まっている間に、少年……ツナは、同じくアホ面をしている男達を、グーで殴り倒してしまったのだった。

「……あ、あのー……ツ、ツナ…さん……?」

自分達以外に動く者がいなくなって、剣介は恐る恐るその背中に声をかける。

だが、

「……先輩を危険な目に遭わせる奴は、俺が許さない……!」
「っ、ひぃぃ……!」

(ていうか、何かデジャブっ……!)

その背中は、まだ怒りの炎が燃えているようで……いや、実際額の辺りが燃えているような気もしたが、ツナと初めて出会った時のトラウマを思い出した剣介は気が付かなかった。

やがて、

「っ、は……!」

しゅぅぅ、と音を立てて額の炎が消えると、ツナははっとしたように、

「先輩っ、大丈夫ですか……!?」
「うぉぅっ…!?」

慌てて剣介の側に膝を着いて手を握ったので、剣介は情けない悲鳴を上げる。だが、それは大きな瞳を潤ませ心配そうに見上げてくる、あの可愛らしいツナで。

「っ、あ…だ、大丈夫…だ……」
「っ、良かったぁ……!」

怪我がないと分かって、途端に安堵したように笑うツナに、剣介は咄嗟に鼻を押さえる。鼻だけではなく、あり得ない所にまで熱が集まりそうだ。
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