何故ならそれは、微かな灯りに鈍く黒光りする……拳銃で。

(ま、マジかよ……！)

剣介は知らないのだ。ツナが、とあるマフィアの時期ボス候補だということも。それらにずっと関わってきて、危険な生活をしてきたことも。

だから、目の前にある物がすぐに現実だと感じることができなくて。

だが、

「っ……！」
「先輩っ…！」

それでも、ツナに何か危険が迫っていることだけは分かって……剣介は、大きく両手を広げた。ツナを守るために。

「ツナは、絶対に渡さねぇからな……！」
「っ……！」

怖くない訳がない。男達の手にある銃が、本物か偽物かどうかも分からない。

だが、大切な人を守らなければという自分の気持ちは確かだ。

それに、

「何だか良く知らねぇが……お前らなんか、あいつらと比べたら屁でもないんだよ……！」
「ぇ……？」
「は……？」

その言葉には相手はおろか、ツナの頭にも疑問が飛ぶ。

そう、ツナの取り巻き達から常に命を狙われている剣介は、この程度のことではあまり動じなくなってきた。何せ、普段からダイナマイトや日本刀、拳、トンファー、そして悪夢……様々な物が、自分に襲い掛かってくるのだから。

(けど、怖いモンは怖ぇよちくしょぉぉ……！)

ただ、やはり本音は隠しておくことにする。

と、ようやく我に返ったのか、男達が口々に喚きだした。

「っ、何訳の分からないこと言ってやがる！」
「もう良い、やっちまえ！」
「っ、ダメ……！」

再び剣介に向けられた銃口に、

(先輩が…危ない……！)

ツナの中で、何かが切れた。


それと同時に、林の中に銃声が響き渡った。





「っ、おいっ…今の音……！」
「あっちだ……！」

暗くなった園内でツナを捜し回っていた守護者達は、近くの林から聞こえた銃声にはっとした。
命を狙われている訳ではないが、それでも危険なことに変わりはない。一緒にいる剣介のことは……まぁ、どうでも良いのだが。

「っ、十代目…！」
「ツナ……！」

だが、林の中へ入って、複数の気配のある場所へ踏み込もうとした瞬間、

「へぶっ……！」
「はっ……？」

そこから飛んできた巨大な何かが、獄寺に直撃した。他の守護者達が身構える中、そこに転がったのは、

「……誰？」

見知らぬ男だった。とんでもない力で殴られたのか、頬が真っ赤になって、鼻からは血を垂れ流している。
だが、倒れた男の側に拳銃が転がっているのを見て、この人物が件のマフィアだということが分かった。