レンアイ受難曲!

自分を喜ばせるために、こんなにも考えてくれていたのだ、と……ツナはあまりの嬉しさに瞳を潤ませた。

「それに、静かな場所でゆっくり…二人きりになりたかったから、さ……」
「先輩…ありがとうございます……」

どこかうっとりとした表情で見つめてくるツナの瞳に、ショーの光が映って……それはキラキラと輝いていて、

「っ……!」

剣介は、その大きな瞳に吸い込まれそうになった。ドキドキと、心臓が早鐘を打ち始める。

「ツ、ナ……」

名前を呼んで、細い肩を両手で抱いた。顔を近付けても、ツナは剣介をじっと見つめたままだ。

「ツナ……」
「先、輩……」

もう一度名前を呼べば、今度は返答があった。
きっと、ツナも分かっているのだろう。剣介が、何をしようとしているのかを。

「っ……!」

ゆっくりと、お互いの顔が近付いていく。華やかな音楽も、今は酷く遠くに感じられた。

そして、ついにそれらが重なろうとして。

「………!」

だがその瞬間、剣介の動きがぴたりと止まった。

「ぇっ……?」

次いで素早く身体を話すので、ツナが不思議そうな声を上げる。剣介の視線はツナではなく、林の奥に向けられていた。

何故なら、

「ぁ……」

そこでようやく、ツナも異変に気付いたらしい。二人の側に、他の誰かがいることを。

「誰、だ……?」

そこに現れたのは五、六人の見知らぬ男達で、年齢は二十代から四十代くらいとバラバラだった。服装こそ普通だが……まとう雰囲気が、ただの一般人でないことがすぐに分かる。

自然と、剣介はツナを庇うように前へ出た。だが男達は、剣介の後ろにいるツナを見ると、

「沢田綱吉……だな?」
「っ……!」

突然知らない人間に名前を呼ばれて、ツナがびくりと身体を跳ねさせる。怯えているのが分かって、剣介はさらに彼を後ろへ隠した。

「我々と一緒に来てもらおうか」
「大人しく従えば、怪我をしないで済むぜ」
「なっ、いきなり何だよお前ら…!」

物騒なことを言う男達に、剣介はツナを庇ったまま後退る。ツナの取り巻き連中の相手だけでも命懸けなのに、これ以上ややこしいのが増えるなんて溜まってものではない。

というか、ようやくその鬱陶しい奴らのいない所で良い感じだったのに……邪魔をされて、それこそ剣介は泣きそうだった。

「沢田綱吉以外に用はねぇ」
「面倒だな……ここで始末しておくか」
「………!」

そう言って男達が取り出した物を見て、ツナと剣介は顔を強ばらせた。
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