レンアイ受難曲!

(あれは、どう考えても笹川の野郎だ……)

笹川がいるということは、他のメンバーも必ずいる。やはり今までの出来事は、ツナの取り巻き達が関わっていたのだ、と。

(どうりで、変だと思ったぜ……)

どうやら、彼らは何としてでも二人の邪魔をしたいらしい。分かっていたことだが、やはり現実を知るとげんなりしてしまう。

(せっかく、ツナと良い感じなのに)

だが、これ以上変なことをされないうちに、帰った方が身のためではないか。奴らと関われば、本当に身が危ないのだから。

(それでも、充分すぎるくらい楽しんだもんな……)

本当は、あわよくばキスができれば……と思っていたのだが、どうもそんな雰囲気にはなれそうにない。人気のない所へ行けば、それこそ奴らの狙いの的だろう。

「あ、あのさ…ツナ……」
「先輩!」

だが、やんわりと帰ることを提案しようとしたのと同時に、ツナが明るい声を上げた。暗い気持ちを吹き飛ばすような、そんな声音で。

「俺、今すっごく幸せです!」
「え……」
「先輩とデートすることができるなんて、思いもしませんでしたし…嬉しくて、本当に夢みたいです……!」
「っ……!」

それは本当に、剣介にしか見せないような、眩しいくらいの笑みで。

その瞬間、剣介の中から何かが吹き飛んだ。

「……な、なぁ」
「はい?」
「今日……ちょっと遅くまでいても大丈夫か?」

早めに帰ろうと、そう伝えようとしていたはずなのに。

「暗くなったらさ、広場で花火とか、イルミネーションを使ったショーをやるらしいんだよ。それを見てから帰らないか?」
「わぁっ、面白そうですね!見たいです!」

なのに、口から出てきた言葉は全く別のもので。

瞳を輝かせるツナを見て、剣介にはもう何の心配も抱かなかった。


***


「だぁぁくそっ!いつの間にか十代目を見失っちまったじゃねぇか!」
「全く、役に立たない忠犬だね」
「お前らが、関係のない人間にあたり散らしていたからな」
「うぐっ……!」
「む……」

バラバラになっていた守護者達は、一度広場に集まることになった。全員何をしていたのかは分からないが、何となく血なまぐさい雰囲気がする。

「つーかさ、どれもただの一般人だったし、本当にツナを狙うマフィアがここにいるのか?」
「そうですよ。これだけ待っていても、一向に現れないじゃないですか」
「オメーらが派手に暴れるから、勘付かれて慎重になっているのかもしれねぇぞ」
「「「………」」」

それには返す言葉もないので、一斉に閉口してしまう面々。
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