レンアイ受難曲!

小さすぎる子どもでは、恐がったりパニックを起こしたりして、大変なことになるのかもしれない。ショーを無事に成功させるためにも、わざと大きめの子どもを選んだのだろう……そう思いたい。

これも良い思い出だし……と、ツナは成り行きに身を任せことにした。

『くっ、こうなったら……あの技を出すしかない!』

しばらくして、そろそろ助け出されるのかとツナが呑気に思っていると、

「待てぇぇぇぃっ!」
「へ?」

○○レンジャーの華麗なる合体技が放たれようとしたその瞬間、舞台の袖から誰かの怒号が響いた。ツナや観客はおろか、舞台上で演じていた役者達も首を傾げた時、

「この世の悪党は、この俺が許さーんっ!」
「な……!?」

突然舞台上に現れたのは、上半身裸でたくましい肉体をさらした……ボクシング選手のような格好をした男だった。まだ若く見えるが、顔には何のキャラクターだか分からないマスクを付けているので、その表情は見えない。

「極限に覚悟しろっ!」
『な、こんなの台本にあったか…!?』
「問答無用ーっ!」
『うわーっ!?』

そう叫ぶや否や、その男は味方をぶっ飛ばす勢いで敵の方へ近付くと、容赦ないストレートパンチを繰り出した。ぶっ飛ばされる親玉。

『なっ、何だお前っ!?』
「うぉぉぉぉっ!」

さらに親玉だけではなく、周りにいた雑魚キャラ達も次々に倒していく謎の男。スタッフ側は大パニック、観客の子ども達は、良く分からないが格好良いと声援を送っていた。

「つ、ツナっ!」
「先輩っ?」

ステージから降りて呆然とそれを眺めていたツナは、慌てたように近付いてきた剣介に腕をつかまれる。そして半ば強引に、その場から引っ張られていった。

「は、早くここから離れるぞ!」
「え、で、でも…」
「良いからっ…!」

まだ良く分かっていないツナを、剣介は急かすように連れていったのだった。





「沢田を狙う奴は、極限に成敗してくれるぅぅっ!」
『ひぃぃぃぃっ!』

ステージ上では、まだ謎のボクシング男……笹川了平が、乱闘を繰り広げていたのだった。


***


「いったい何だったんでしょうね…?」

ステージから離れた場所で休憩しながら、ツナは先ほどのことで首を捻っている。

「○○レンジャーの中に、あんなキャラいましたっけ……というか、どこかで聞いた声だったような」
「………」

うんうん唸る恋人の横で、剣介は今度こそ確信していた。
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