レンアイ受難曲!

(そ、そういう問題じゃないんですけど……!)

だがこのチャンスを逃せば、次にいつあーんをしてもらえるか……。

「あーん」
「っ……!」

目の前で天使のように微笑むツナが、むしろ小悪魔のように見えてくる。

(が、頑張れ俺ぇぇぇっ……!)

「あ、ああああーん……!」

剣介は、己の持てる全ての理性をフル動員することになったのだった。


そして、ツナにあーんをしてもらったことによって、守護者達の殺意はとんでもないことになったのも、最早言うまでもない。


***


至福の、ある意味地獄のようなランチタイムを終えて、二人は再び園内を回り始めた。

それからも、ことあるごとに何者かの視線を感じたり、気になる出来事が起きたりしたのだが……剣介は、もうそれさえもほとんど気にすることができなくなっていた。

何故なら、絶叫マシンではいつも手を握られ、お化け屋敷では身体にピッタリと引っ付かれて……別の意味で、精神はもうぼろぼろだったのだ。しかも、いつもより一緒にいる時間が長いため、ツナのいろんな表情や、可愛らしい仕草をたくさん見せ付けられて……何度倒れそうになったか分からない。

(俺…今日帰ったら、やっぱり死ぬかもしれないな……)

次のアトラクションに向かいながら、半ば遠い目でたそがれていると、

「わぁっ、懐かしい!見て下さい先輩、○○レンジャーのショーがあるみたいですよ!」

ツナが何かを見付けたようで、少し興奮気味にそちらへと向かっていく。

そこには巨大なステージがあり、それを囲むようにしてすり鉢状の客席があった。ショーやライブなどを行う場所らしい。
もうすぐ始まるのか、客席には親を連れた小さな子ども達が大勢いた。どうやら、有名な戦隊もののショーのようで。

「へぇ、本当に懐かしいな。今は何代目くらいなんだろ」
「ずっと昔からやってますもんね。小さい頃を思い出すなぁ……」
「せっかくだから、観ていくか」
「えっ?」

何となくツナがウズウズしているような気がして、剣介はそう提案してみる。ツナは驚いたようだった。

「で、でも…ちっちゃい子ばっかりだし……」
「大きくなったからって、観たら駄目とは決まってないだろ。な、行こうぜ」

肩を押すように促せば、ツナは少し躊躇った後、素直に後を付いてくる。強制してしまったか、とちらりと表情をうかがうと、どこか嬉しそうな顔をしていたので、剣介はホッとした。
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