レンアイ受難曲!

だが、テーマパークへ入ってからこれまでに感じたいくつもの違和感に、だんだんおかしいという想いが湧いてきて。
何かが、自分達の周りで起ころうとしているのではないか。いや、もしかしたらもう起こっているのではないか、と。

そもそも、朝から警戒していたことだが、ツナと二人でいて、あの取り巻き連中が何もしてこないのはおかしいのだ。普段なら、手段を選ばずに邪魔をしてきて、容赦なく剣介をぶちのめそうとするのに。

(やっぱり、今までのことはあいつらが関係していて、何か企んでるんじゃ……)

嫌な予感しかしない剣介は、思わず辺りをキョロキョロと見渡してしまう。ほぼ条件反射だった。

「先輩?」
「あ、いや……腹減ってきたなーって思って」
「そういえば、もうすぐお昼ですね」

そんな剣介の癒しといえば、隣で可愛く笑う恋人だけで……一瞬で心が和むのを感じた。

「じゃあ、そろそろ昼飯にするか。あそこのフードコートで何か……」
「あ、あの……!」
「ん?」

少し向こうにある、広いフードエリアへ向かおうとする剣介を、ツナが躊躇いがちに呼び止める。不思議に思って見下ろせば、ツナは言いにくそうに、だが頬を少し染めて、

「お、俺…お弁当、作ってきたんです……」
「へ……」
「あっ、全部じゃなくて!母さんにいっぱい手伝ってもらったんですけど……それで、その…もし良かったら……」
「………」

(て……)

一瞬の間の後、

(((手作り弁当っ……!)))

雷のような衝撃を受けたのは、剣介だけではなく見張っていた守護者達も同様で……この瞬間、ツナ以外の全員の気持ちが一つになった。

さらに剣介は目の前で、恥ずかしそうにもじもじするツナを見てしまって……いろんなところが、えらいことになりそうだった。

「その、あんまり美味しくないかもしれませんけど……」
「い、いやっ…すっげぇ嬉しいよ!じ、じゃあそこのベンチで食うか!な!」
「良かった……!」

ホッとしたように表情を綻ばせるツナに、剣介はもう本当に限界寸前だ。


そして、手作り弁当の衝撃から立ち直った守護者達が、阿鼻叫喚したのは言うまでもない。


すぐ近くにあったベンチに、今度は二人並んで座る。ツナは、照れたように。そして剣介は、ガチガチに固まった状態で。

ツナは、ずっと肩にかけていたバッグから、大きめのお弁当箱を取り出した。風呂敷包みを解いて、蓋を開ければ、

「っ、うわ…すげぇうまそう……!」
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