レンアイ受難曲!

「ツナ、お待たせ」
「あ、先輩!」

首を傾げていると、ドリンクを両手で持った剣介が帰ってきた。こちらは、何とか動揺は収まったらしい。

「はい、コーラで良かったか?」
「ありがとうございます!」

少しだけ今のことが気になったものの、剣介が帰ってきたので、ツナはすっかりそのことを忘れてしまった。





一方、消えた男達はというと。

「なっ、何なんだよお前ら!」
「いきなり何しやがる!」

少し離れた草むらで、先ほどの男二人が顔面蒼白になっていた。目の前には、鋭い視線で睨み付ける雲雀と骸。

不埒な視線と雰囲気でツナに近付こうとした二人を、雲雀と骸は目にも止まらぬ早さであの場所から草むらに引きずり込んだのだ。周りの人間はおろか、ツナさえもその姿は見えなかっただろう。

ちなみに、二人はこの男達がマフィアなんかではなく、ただツナをナンパしようとしただけだということは分かっていた。だが、

「目障りなんですよねぇ……こともあろうか、ちょうどむしゃくしゃしている時に」
「とりあえずムカつくから……咬み殺す」
「ぇぇぇっ!?」

それは最早八つ当たりというか、憂さ晴らしというもので。

「「ぎゃぁぁぁぁっ!」」

むしろ哀れなのは、二人組の方だったりする。

数秒後、草むらから断末魔とも言える絶叫が響き渡ったのだった。





ちなみに、剣介とツナの二人は、

「い、今……何か悲鳴みたいなものが聞こえなかったか?」
「え、そうですか?」

嫌な予感を感じ取った剣介は辺りを見回すが、基本的に鈍感なツナが気付くことはなかった。





そのまた一方で、

「ククッ、本当にお前らは最高に面白いよな」
「ん?どうしたのだ?」
「いいや、何でもねぇ」

了平と一緒に園内を回っていたリボーンは、バカップルなツナ達を見て、さらにそれに空回りする守護者達を見て、心底楽しそうに笑ったのだった。


***


それから、ツナと剣介はいくつかのアトラクションを回って……そして、その都度二人に近付くテーマパークの着ぐるみやらお店のスタッフやらを、守護者達が陰でフルボッコにするという大惨事が繰り返された。

そして、

(……何かこの遊園地、ちょっとおかしなことが良くあるよな……)

次のアトラクションへ向かいながら、剣介は少しずつ疑問を抱いていた。

実は、今朝から誰かの視線は感じていたのだ。それも、複数の。
それでも、その時は気のせいかと思っていたのだが。
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