レンアイ受難曲!

「なっ、あの男ひょっとして馬鹿ですか!?沢田綱吉を一人にするなんて!」

ベンチに座ったツナから離れて売店へと向かう剣介を、離れた草むらから眺めていた骸は激昂した。その隣には、不満そうな顔をした雲雀の姿が。

「ところでさ、何で僕が君と一緒に行動しなくちゃいけないの?」
「そんなこと言ってる場合ですか!僕だって君となんてごめんなんですから!」
「そもそもこんなコソコソしないで、さっさと綱吉を連れて帰れば良いんじゃない?」
「貴方、さっきの話を聞いてたなかったのですか!?」

ちなみに、まとまりのない守護者の中で、最も組ませてはいけないこの二人をペアにしたのはリボーンである。その理由が、ただ面白そうだからというものだとは、二人は知りもしないだろう。

その時、

「「!」」

何か不穏な気配を感じ取ったのか、二人は同時にそちらへと視線を向けた。





(ああー楽しいなぁ……)

飲み物を買いに行った剣介を待ちながら、ツナはウキウキとしていた。いつもこんな所に来れば、大暴れする守護者達やチビ達を抑えたり宥めたり、ツッコミを入れたりするのに忙しくて、自分が満喫する暇はほとんどないのだ。

それを、こんなにのんびりと……それも、恋人と一緒に過ごすことができて、ツナは満足していた。

(まぁ、でも……)

そんなツナに、ふと暖かい微笑みが浮かびかける。

だがその時、

「……なぁ君、今一人?」
「え?」
「男だよな?すっげーでかい目」
「あ、の……?」

ベンチに座ってぽやっとしていると、いつの間にやってきたのか、ツナの前には二人組の男が立っていた。少しガラの悪そうな、派手な服装をした青年だ。

「本当だ。ちっちぇし、女みてぇ」
「なぁ……一人ならさ、俺らと一緒に遊びに行かねぇ?」
「えっと、こ……いえ、友達と来ているので……」
「そんなのほっとけよ。ほら…」
「わっ…!?」

強引に手をつかまれて、強く引っ張られる。
ツナは知らなかった。男達がどこかいやらしい目をして、舐めるようにツナを見ているのを。

「ちょっ、ちょっと待っ……!」
「いーじゃんか。言うこと聞けば、後で良いこと……」

そして、その場から無理やり連れていかれそうになった時、

「ふげっ!?」
「っ……!」

妙な呻き声がして、突然ツナの視界から二人が消えた。手を放されて、少しよろめいてしまう。

「あれ……?」

驚いて辺りを見回すが、すでに二人の姿はどこにもいない。
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