レンアイ受難曲!

それはまさか狙って言っているのか。いや、ツナの表情は純粋そのもので。

「じ、じゃあまずジェットコースターに乗るか!」
「はいっ!」

(俺…最後までもつかな……)

すでに剣介はノックアウトされかけている。





「……くっそぉ、楽しそうだな……」
「獄寺ぁ、そんな殺気出してたら気付かれるって」

そんな二人を建物の陰から見つめるのは、獄寺と山本の二人。話し合いの結果、ペアになってツナを遠くから護衛し、敵を捜索することになったのだ。

「つっても、こう人が多いとどこに紛れ込んでるか……」
「ん?おい、あれ……」

何かに気付いたのか、山本がとある方向を指差した。獄寺も視線を向けて……二人の眼光に鋭さが増す。そして、こっそりとその場から離れていった。





ツナと剣介の二人は、入り口から続く巨大なアーチを進んで、その向こうにあるアトラクションへと向かっていた。

その時、

「ん?」
「何でしょう?」

近くで、多くの子ども達の悲鳴のような声が一際高く聞こえて、二人はそちらに目を向ける。いや、向けようとした。

だが、

「わぁっ!?」

突然、ツナの目の前に巨大な何かが現れて、驚いて声を上げてしまう。

それは、全身もふっとして、何かの動物を型どった……着ぐるみだった。
このテーマパークのイメージキャラクターだ。子ども達の悲鳴は、歓声だったらしい。

「びっくりしたぁ」
「だな、いつの間に来たんだ?」

その、熊だか何だか分からないそれは、大袈裟な身振り手振りで(声は出せないので)ツナ達に歓迎の気持ちを表しているらしい。

「記念に写真でも撮っとくか?」
「えっ、俺ですか?」

笑って携帯電話のカメラを向ける剣介に、ツナは少し遠慮をしてしまう。と、それが伝わったのか、その着ぐるみはさらに近付いてきた。

そして、その大きな手が細い肩を抱こうとした瞬間、

「ぇっ……?」

いきなり、着ぐるみがツナの視界から消えた。いや、引き剥がされたと言った方が正しい。

見ると、別の着ぐるみが二体、ツナに近付こうとしていたそれの腕をつかみ、連行するように引きずっていく。

あっという間に、着ぐるみ達はその場からいなくなってしまった。

「……何だったんだ?」
「さ、さぁ……」

その場に取り残された二人の頭には、いくつものクエスチョンマークが浮かんでいた。





一方、消えた着ぐるみ三体はというと……。

「ひぃっ…な、何なんだ…!?」
7/22ページ
スキ