センパイ受難曲!

それこそ死ぬ気で、告白したら死ぬくらいの覚悟じゃないと……。

「………」

その瞬間、俺のどこかで何かがキレた。

「うぉぉぉぉっ!俺は、死ぬ気で沢田ツナに告白するっっっ……!」

全身が痛いとかもうどうでも良い。俺はがばりと立ち上がると、再び勢い良く駆け出した。まだ動けたなんて奇跡に近い。

「うぉぉどこだ沢田ツナぁぁっ!」

特別教室を一つずつ確認(猛スピードで通り過ぎるその一瞬で)するが沢田はいない。残すはこの上……四階だけだ。

「うぉぉぉぉっ!」

絶叫しながら階段を上がって上の階へ……

上がって、上がって、上がって……

「――って!いつまで上がるんだよ!?」

もうとっくに上の階へ着いてるはずなのに、何故か上がっても上がっても階段の終わりが見えない。

その上、視界が何となくぼやけたような、霞んだように悪くなってきた。身体も何かがのしかかっているかのように動きにくい。
まるで、夢の中にいるような……。

まさか、本当に夢の中なんだろうか。身体に限界が来て、俺は気絶してしまったんだろうか……?

『クフフ……』

その時、不意にどこからか聞こえてきた変な笑い声。

(この声は確か……)

アイツだ。変な髪型をした、沢田のストーカー……

『ストーカーとは失礼ですね。僕は沢田綱吉の恋人、六道骸です』

何言ってんだ。ていうか、これが夢なら何でこいつが出てくるんだよ。

『クフフ、夢なんかじゃありませんよ。ここは僕の幻術世界の中です。まぁ“悪夢”と言っても何ら変わりはありませんがね』

何言ってんだコイツ。髪型がおかしいなら頭の中もおかしいのか。
ていうか、この訳の分からない現象がお前のせいなら、早くここから出せ。俺は沢田に会いに行くんだからな。

『それはできませんねぇ…沢田綱吉は僕のモノですから、貴方に会わせるわけにはいきません』

何寝呆けたこと言ってやがる。ていうか、ということはやっぱりこの上に沢田がいるんだな?

だったら、自力で脱出してやる……!

『無駄ですよ。いったん僕の術にかかれば……』
「うぉぉぉぉっ!」

俺は残った力を振り絞るように、全身に力を込めて獣のように咆哮を上げた。

「幻術だか悪夢だか知らねぇが、俺の邪魔をすんな……!」

こんな所で足止めをくらってる場合じゃない。早く沢田に会わねぇと。

『なっ、僕の幻術を……!?』

六道の驚いたような声を遠くで聞きながら、重たかった身体が軽くなるのを感じた。さらに霞んでいた視界が晴れていって、上の階へと続く階段に終わりが見える。
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