センパイ受難曲!

「なっ、何で…お前、今日は用事があるって……」
「忘れモンしたから取りに来たんだよ。てか、てめぇこそ何しに来やがった」

(京子の話だと、沢田は居残りしてるはずなのに……)

教室の中を見回しても、沢田の姿はどこにもない。

「さ、沢田はいないのか……?」
「ああ?十代目なら今ごろ……って、まさかてめぇ!」

ハッとして口をつぐんだけどもう遅かった。俺から沢田の名前が出た途端、獄寺がそりゃもう物凄い顔で睨んでくる。

「てめぇ、また十代目に仕返ししようとしたんだな!?一人のところを狙うなんて、この下衆野郎!」
「なぁっ!?ち、違う!仕返しなんかじゃ…」
「しらばっくれんな!」

そうだ、こいつらから見れば俺は沢田の天敵で、話したところで何も聞いてはくれないだろう。
獄寺が懐に手を入れたのを見て、俺はサッと青ざめた。

「十代目には指一本触れさせねぇからな!」
「ちょっ、ちょっと待て!」
「うるせぇ!果てろ!」

懐から取り出したモノを、間髪入れずに投げ付けられる。導火線の付いたソレは、爆竹なんて可愛いもんじゃない。

「うわぁぁぁっ!?」

どっかーんと、耳をつんざくような爆発音が響いた。


***


凄まじい衝撃波に、焼けるような熱風。ずきずきとした痛みが、辛うじて俺の意識を繋ぎ止める……

「って、呑気なこと言ってる場合じゃねぇぇっ!」

俺は誰もいない廊下を、死に物狂いで走っていた。それもそのはず、後ろからは……

「待ちやがれぇぇっ!」

鬼みたいな形相をした獄寺が、ダイナマイトを投げ付けながら追い掛けてくる。からだ


教室で、直撃は避けたものの爆風でぶっ飛ばされた俺は、身体をあちこちぶつけながらも何とかそこから逃げ出した。避けたって言っても、制服は焦げてボロボロだし制服ってか身体中痛いけど!

何で平和な並盛でこんな命の危険にさらされなければならないのか。告白なんてどころの騒ぎじゃない。逃げねぇと確実に死ぬ。今度こそ死ぬ。

というか、教室じゃないとしたら沢田は一体どこで補習を受けてるんだ。平凡そうで地味に広いこの校舎、探すのは至難の業だ。

と、

「どわぅっ!」

痛みで注意力散漫になっていた俺は、足をもつれさせて派手に転んでしまった。

そこへ近付いてくる足音。それが、俺には死神の足音に聞こえてしまう。

「……持田先輩?」
「ひぃぃっ!……えっ?」

だが、それは獄寺じゃなかった。どうやら騒ぎを聞き付けてやってきたらしい。
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