センパイ受難曲!

(まぁ、気のせいだよな……)

はっきりと分からないことを考えていてもしょうがない。それより、今は沢田のことだ。

告白する覚悟は決めた。明日、俺は絶対に沢田に告白する!


沢田のことしか考えていなかった俺は、とある重大な問題があることをすっかり忘れていたのだった。


***


翌朝。

「………」

俺は昨日と同じ電信柱の陰に隠れて、途方に暮れていた。周りからかなり不審に思われているが、そんなことは気にならない。

視線の先には、今日も可愛い沢田の姿。だが、その両隣には、

「十代目っ!」
「ツナ!」

いつもの取り巻き二人。

俺は重大な問題を忘れていた。
告白するには、沢田をあいつらから引き離さなければならないということを。

(せっかく昨日の夜、一人で何度何度も告白の練習をしたってのに……)

そして迎えた今日。朝一で告白しようと沢田の家に向かったら、玄関の前にはすでに忠犬よろしく(ストーカーともいう)悪童獄寺隼人がいたわけで。
そのまま声をかけることもできず、ばれないように(本当のストーカーのように)後を付けると、ほどなく見た目爽やか中身腹黒山本武が合流して……そして今に至る。

良く考えれば、沢田は普段から一人になることがほとんどない。俺が迂闊に近付こうもんなら、取り巻き連中に攻撃されるに決まってる。

(くそ、どうすりゃ良いんだ……!)

沢田をどこかへ呼び出そうか?下駄箱にメモでも置いておいて……でも、俺の名前が書いてあったら沢田は来ないかもしれない……というか万が一周りの奴らにばれたら、復讐だと勘違いされて今度こそ殺られる。けど、逆に名前を書かなかったら不審に思われるだろうし。

(こうなったらラブレターを書くか?いや、それは俺の性に合わない……)

ああでもないこうでもないと一人で悶々としていると、

「あれ?持田先輩?」
「どわぁぁぁっ!?」

いきなり背後から呼び掛けられて、大げさなくらい飛び上がってしまう。驚いて後ろを振り返れば、ショートヘアの可愛らしい女の子が立っていた。

「あ…きょ、京子……?」
「おはようございます」
「お、おはよう」

学園一可愛くて、マドンナと言われている笹川京子だ。ちなみに、あの笹川の妹でもある。

京子とは……例の、沢田とのトラブルに深い関係があったから、俺としては複雑な気持ちだが。

「先輩、何を見てたんですか?」
「えっ!?い、いや、何も見てねぇって!本当に!」

京子が俺の背後を見ようと身体を乗り出そうとするので、俺は慌てて誤魔化す。
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