Qが初めて仕事をする話
ジャックに結婚を勧められてもなかなか結婚相手を決めなかったスペード国の王様が、自ら相手を城に連れてきてすぐに結婚式を開いた話は、国民の間では専らの噂となっていた。
「あ、ねぇアーサー聞いたかい!?今日から俺の仕事が半分になるらしいんだ!
つまりは今まで俺の仕事だったものを君にやってもらうことになるんだけど、そんなのダメだと思うんだぞ!」
よく晴れた日の午前、城の廊下にてキングは自分の少し後ろを付いてきている俺に、振り返って話しかけてきた。
食堂からの道を覚えるためにあたりをキョロキョロと見ていた俺は、突然振り返って話しかけられたことに驚いて、持っていた国務についての書類を落としかけたがなんとか持ちこたえる。
「いえ、それが私の仕事ですので…」
この国では、キングとクイーン自らが国務を行う。今までこの国にはクイーンがいなかったため、キングが全て行っていたみたいだが、今日からは半々に分けることになる。
今日から俺がクイーンとして国務を行うからなのだが…キングはそれがお気に召さないらしい。
まだ仕事に慣れていないからという事だろうか。確かにこんなにきっちりとスーツを着て、格式張った表記の書類を見たことは無かった。しかし昨日、ジャックから嫌という程指導を受けた。俺だって仕事くらいはできる。
「もー!!そういうことじゃないんだぞ!」
と何故かむくれて頬を膨らませ、また歩きだすキング。
優しい心遣いありがとうございます、とか言った方が良かったのだろうか?
俺がそんなことを考えていると、扉の前でキングが立ち止まる。
「ここが執務室だぞ!…ねぇ、君、本当に一緒に仕事するのかい?仕事なんてしないで俺の隣で、本でも読んでいてくれよ」
とまた振り返り、少し不安そうな顔で聞いてくる。
「…ジャックにお聞きになればよろしいかと」
そんなに俺と仕事すんのが嫌なのかよ、と言いかけて言葉を呑み込む。今俺の目の前に立っている男は、この国の王なのだ。一庶民あがりの俺が、そんな口を聞いていいわけが無い。
そんな俺の無愛想な返事に
「それもそうだね!」
と笑顔で言って、両手で扉を開ける。
バーンと開かれた部屋の中には、既にジャックが待っていた。
キングとその後ろに続く俺を見て、ジャックが何か言おうと口を開いた。と同時に、キングがジャックの元へと走る。そしてジャックの両肩を掴むと前後に揺らしながら
「Hey ジャック!彼に仕事をせずに俺の隣にいてもらうだけってのはダメなのかい!?」
と訴えた。でかい声で。
「あいやー!?!何わけわからん事言ってるあるか!?」
「いいじゃないか!!俺の癒しになってもらうだけで俺、いつもの何倍も頑張れる気がするんだぞ!」
「そう言ってクイーンに話しかけてばかりで仕事が手につかないのが目に見えるある!」
キングの両手首を掴み、書類が山積みになっている机へと連行するジャックに、駄々をこねるようにぶーぶー言いながら椅子に座る。
そして、ジャックの説教をくらいながら書類のひとつに手を伸ばし、不貞腐れた顔で目を通すキング。
…あいつ、確実に聞いてねぇな。
そんな風に思って少し笑ってしまった時、初めてこいつに対しての親近感と、どんな奴なのか知りたいという思いが湧いてきたのだった。
「あ、ねぇアーサー聞いたかい!?今日から俺の仕事が半分になるらしいんだ!
つまりは今まで俺の仕事だったものを君にやってもらうことになるんだけど、そんなのダメだと思うんだぞ!」
よく晴れた日の午前、城の廊下にてキングは自分の少し後ろを付いてきている俺に、振り返って話しかけてきた。
食堂からの道を覚えるためにあたりをキョロキョロと見ていた俺は、突然振り返って話しかけられたことに驚いて、持っていた国務についての書類を落としかけたがなんとか持ちこたえる。
「いえ、それが私の仕事ですので…」
この国では、キングとクイーン自らが国務を行う。今までこの国にはクイーンがいなかったため、キングが全て行っていたみたいだが、今日からは半々に分けることになる。
今日から俺がクイーンとして国務を行うからなのだが…キングはそれがお気に召さないらしい。
まだ仕事に慣れていないからという事だろうか。確かにこんなにきっちりとスーツを着て、格式張った表記の書類を見たことは無かった。しかし昨日、ジャックから嫌という程指導を受けた。俺だって仕事くらいはできる。
「もー!!そういうことじゃないんだぞ!」
と何故かむくれて頬を膨らませ、また歩きだすキング。
優しい心遣いありがとうございます、とか言った方が良かったのだろうか?
俺がそんなことを考えていると、扉の前でキングが立ち止まる。
「ここが執務室だぞ!…ねぇ、君、本当に一緒に仕事するのかい?仕事なんてしないで俺の隣で、本でも読んでいてくれよ」
とまた振り返り、少し不安そうな顔で聞いてくる。
「…ジャックにお聞きになればよろしいかと」
そんなに俺と仕事すんのが嫌なのかよ、と言いかけて言葉を呑み込む。今俺の目の前に立っている男は、この国の王なのだ。一庶民あがりの俺が、そんな口を聞いていいわけが無い。
そんな俺の無愛想な返事に
「それもそうだね!」
と笑顔で言って、両手で扉を開ける。
バーンと開かれた部屋の中には、既にジャックが待っていた。
キングとその後ろに続く俺を見て、ジャックが何か言おうと口を開いた。と同時に、キングがジャックの元へと走る。そしてジャックの両肩を掴むと前後に揺らしながら
「Hey ジャック!彼に仕事をせずに俺の隣にいてもらうだけってのはダメなのかい!?」
と訴えた。でかい声で。
「あいやー!?!何わけわからん事言ってるあるか!?」
「いいじゃないか!!俺の癒しになってもらうだけで俺、いつもの何倍も頑張れる気がするんだぞ!」
「そう言ってクイーンに話しかけてばかりで仕事が手につかないのが目に見えるある!」
キングの両手首を掴み、書類が山積みになっている机へと連行するジャックに、駄々をこねるようにぶーぶー言いながら椅子に座る。
そして、ジャックの説教をくらいながら書類のひとつに手を伸ばし、不貞腐れた顔で目を通すキング。
…あいつ、確実に聞いてねぇな。
そんな風に思って少し笑ってしまった時、初めてこいつに対しての親近感と、どんな奴なのか知りたいという思いが湧いてきたのだった。
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