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Qが初めて仕事をする話

あぁ…終わったな……、と思いながらまた更に涙が出てくる。しゃくりあげる自分の声だけが城内に響き、あぁ自分はここに居るんだ、ここに居たんだという______待ってくれ視界が暗転するのが早すぎる。
全身が苦しい。まるで縛られているかのように、締め付けられる感覚を特に上半身に強く感じる。
もう死ぬのかな俺…。ごめんな、ブラウニーやピクシー、ユニコーン………。お前らともっと一緒にいたかっ

「好きだよ」

その声の後、突然視界が一気に明るくなる。さっきまでと変わらぬ、青い絨毯の上だった。
キング…アルフレッドが、困ったように笑いながらもう一度「好きだよ」と言った。

理解が、追いつかない。

「あ、はは……。その、ごめん……初めて言った…よね?」
決まりが悪そうに遠慮がちに俺を見て言う。

「その、俺、君のことが好きなんだ。
偶然城下で君を見かけて追いかけてたら、悪いやつに絡まれちゃったんだけど、君は自分はふらふらなのに助けてくれてさ…。
何とかしたい一心で城まで連れてきたんだけど、俺、城を出る時に結婚相手を連れて帰ってくるからって言ってたんだよね。で、勘違いしたジャックや使用人たちが話を聞かなくって、どうしようって思ってたら君がOKしたって言うじゃないか。もう嬉しくて嬉しくて……」

そういうアルフレッドの声は、少し震えていた。顔を見ようと上を見るが、アルフレッドも上を向いていて、見せてくれない。
嘘をついているようには思えない。それが本当なら、俺はこいつにすごく酷いことを……。

「でも、君がそういうことなら結婚の話は無かったことにしよっか」

まだ声が震えている。今までの自信満々なアルフレッドからは想像出来ないくらい、弱々しく折れてしまいそうな声。
家や金のことを無視して、改めてこいつについて考える。

ものすごく短い時間だったが、こいつの隣にいる時は、家や町にいるときよりも格段に落ち着いていられた。ここに居てもいいのだ、と感じられた。俺を必要としてくれているのだ、と。

そして俺は今、こいつにさっきのように笑ってほしいと強く思っている。


それが、何よりの答えだ。


「国民に色々言われるかもしれないけれど、俺なら何とか大丈夫だし、君を何とかしてあげたい気持ちに変わりはないから援」

「抱きしめろよ」

「え…?」

「俺のことを離したくないなら抱きしめろつってんだよ……ばか」

不器用すぎる俺の言葉に応えたアルフレッドに、ぎゅっと力強く抱きしめられる。
胸でアルフレッドの鼓動を感じながらの上半身の少し痛みを、とてつもなく愛おしく感じた。

fin
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つスコーン