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第1章

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「ただいま!りとおにいちゃん〜」
軽快な声でドアを開けた。




ついたアパートは一人暮らし用よりは少し大きめだが、彼が以前住んでいたものよりはかなり狭そうだ。

僕の緊張を他所に彼女はずんずんと進み、ドアの前まで来てしまった。

「ただいま〜りとおにいちゃん!友達が来てるよ!」

キラキラとした笑顔で友達と言う莉巳ちゃんに申し訳なくなった。


「ん〜?誰のことだよ〜」

少しだけ撫で声な声に、変わらないあの花の匂いが香ってくる。



彼がそばにいる
彼が近づいてきている



そう考えるだけで僕の全身が歓喜に満ち溢れた。そのむず痒さに堪らず、靴を脱ぎ捨て廊下を走った。

「ちょっと、ドンドンって…走らな…っ!」

廊下を抜けて一枚ドアを開けると、
花の香りが強くなった。
目の前には無防備な格好で驚いた顔をしている理斗、
ああ…理斗だ。






「理斗!!会いたかった、会いたかった!」









思い切り両手で閉じ込めた。
離さない、閉じ込めたい、僕だけのものに、
ギュッと抱きしめて彼の首元に顔を埋める。











「…やっ、ちょ、真斗さんっ」








動く度に強くなる"理斗の香り"に胸が踊らされて、より離れがたくなる。
好きだ、好きだ、これを待っていた…っ!

「わかった、わかったから…真斗さん少し離れてよ…」

少し弱い声で告げて、僕の中でもぞもぞと動いた。



「へっ、お兄ちゃんの元彼…」
可愛らしい莉巳ちゃんにまず事情を説明して、
話をしたいと告げる。

「お、お兄ちゃんが良いならいいです」

一応了承は得たから、
とりあえず理斗を座らせて話をする態勢に入る。











「理斗…ごめん。本当にごめん。」







理斗の泣きそうな顔に、自分の罪がこんなにも重いものだったと自覚する。






「なんのごめん?…浮気してごめん?それとも僕が好きじゃなくてごめん?ー」







それはテンプレのように聞こえてそうじゃなかった。
彼なりに頑張った当てつけなんだと思う。
少しだけ僕を攻撃するような言葉を使って、遠ざけようと頑張っている理斗の言葉。
でもそれは、…表情とは全く違った。
彼の顔は、僕を愛おしいと思っていてくれているような顔だった。
自意識過剰かもしれないけれど、彼は…理斗は僕を好きでいてくれていると思う。

そんな少しの希望をつかみ損ねるなと言わんばかりに、頭は働いていないのに口ばかり動く。







「そんなのじゃない!説明させてほしい。…理斗お願いだ、全部正直に話すから…」






泣きそうな顔で辛そうに泣く理斗を尻目に全てを説明した。









幼い頃のこと、
あの人のこと、
理斗のこと、
ずっと探していたということ、










「…もうあれから自覚しっぱなしなんだ。
理斗がいなきゃ無理だ、好きだ理斗。…本当に愛しているから…信じてくれっ」











理斗が好きで堪らなくて、それが伝わらなかったらどうしようかと不安になってつらくて泣いてしまう。
理斗も…こんな気持ちだったんだろうか。












「ま、真斗さんっ…」










ぐずぐずと鼻をすすって僕を見つめる理斗がとても愛おしい。













「…しんじて、いいの?好きでいいの?…真斗さんは理斗のものなの…?」







子猫のようにか細く、この一瞬に縋るような弱々しい声が僕の耳に轟いた。














ー好きだ、愛おしい、愛してるー











また堪らず目の前の理斗を軽々と両脇で上に持ち上げ、机の隔たりを超えて僕の膝元に乗せる。驚いた理斗は泣きそうになってまた目がしょぼしょぼしてるみたい。














「…理斗は僕のものだ。好きだ、愛してる。
時間がかかってもいいから、またやり直そう」






拒絶されるかもしれない言葉を使っても、理斗に信じてもらいたかった。

半年間探し続けて、ようやく見つかった僕の太陽。





















「まずはお友達から…」





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