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俺の愛した先生

あれからもう十年が経って、俺は二十八の歳になった。ーー先生は三十九のはず。

実は今日、東京で中学時代の同級生から同窓会の案内があり哀愁を感じたくて参加することを決めた。
たまたま東京で働いていた俺はその同窓会には容易に生きやすく、少し楽しみで気持ちが弾んでいたりもした。

会場に着けばもう出来上がっている主催者側の同級生や、いかにも仕事終わりですというように疲労を見せながら酒を飲む同級生もいた。その光景にやはり俺たちは大人になったのだ、と実感せざるを得なかった。


しばらくして中学の時の教師たちが集まり始めた。皆、他県からやってきて俺らよりも歳をとったなという印象が強かった。



『みんな、久しぶり』

あの柔らかい声にどきりとして急いで振り向けば先生がいた。

『あ、隼斗くん…久しぶり』

そう笑う先生に俺への未練は少しも感じられなかった。



(え、司先生!結婚したんですか!?)

女の国語の教師が声を上げた。

『あ、うーんちょっと違うんだけどね、
内縁…みたいな…事実婚っていうのかな…』

頬を赤く染めてヘラヘラと笑う先生。

ーーそう、俺はそれが見たかった。

その笑顔を作るのが俺であって欲しかった。


あのことに早く気づいておけば、こんなに苦しくはならなかったのかと先生を見つめながらじくじくと痛む胸を抑えた。


会が終わって結局先生と話すことになってしまった。外の空気を吸いに出ると先生は電話していた。

『…あ、隼斗…久しぶり』
「久しぶり、先生。先生事実婚なんだね、おめでとう」
『うん…ありがとう。そういう隼斗はどうなの?彼女とかいないの?』
「それが、半年前に振られました…」
先生はケタケタと笑う。

その彼女は先生くらい小さくて、黒髪の短髪で少し先生に似ていた。

「先生…俺、先生が転勤になってからちゃんと自覚したんだよ。先生のことが好きなんだって」

驚いた先生はこっちを見ながら涙が流れそうになっている。

「先生、もう付き合うことできないけど、本当は…本当は、ちゃんと好きだった…愛してたんだよ!」

当てつけのように、
叶わなくなってしまった自分の思いをようやく先生に伝えることができた。
先生は驚いた顔をして、その後に涙を流した



『ありがとう、あの時は…僕も好きだった。恋人だと思ってて浮気…というか女の子と付き合ってたのはショックだったけど思い違いだったから…しょうがないんだよ』

悲しそうな顔をしてこう言った。
でも先生は続けた。





『お互い幸せを見つけたらいいねーー』




そういうと先生の後ろにとある男の人が見えた。




(司、帰ろうか)

黒髪できちっとセットされた髪に、俺なんかよりも整った顔をしていてロングコートを着ている男。
背は優に百八十は超えているようで、先生よりかは若く見える。

『うん、まさ、帰ろうか』



先生はあの時、
俺が手に入らなかった笑顔で
まさと呼ばれるその男を見て笑った。




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