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俺の愛した先生

俺が中学一年の時、俺より身長が低い弱そうなもさっとしたいかにも陰キャそうな保健医を無理矢理抱いた。
中は心地よく、声は甘く、縋ってくる姿に
思わず好きだと溢れてしまった。

その健気さと隠されていた甘えん坊なところに、落とされたのだと思う。


しかし所詮俺は中学生。
思春期がやってきて、周りの奴らが彼女作らなきゃと焦る気持ちに俺が焦らされて、周りの奴らに流されて女の子と付き合ったり、キスしたり、セックスだってしたんだ。
そうだ、先生。俺童貞じゃないんだよ。

きっとこんなこと言ったら先生は目の前で泣いてしまうだろうに。
…その時の俺には"先生と付き合ってる"なんて思いは一ミリぽっちもなかった。

中学三年になる頃には女の子の経験もたくさんしてたし、先生のことも抱いたし、人並みには経験を積んだ。
昔からルックスは良いと褒められてきていたことが功を奏したのか、人よりかは"恋愛"だとかそんなものはとっくに終えていた。

高校生にあがって、髪を金髪に染めた。
所詮、高校デビューなんてやつ。
そしたら何故か学校のプリンスだとか他校の女子校とかにファンができたりだとか、そんな大それた事が起きてしまった。

バレンタインデーのチョコは袋詰めを両手に抱えて帰るのが当たり前、駅を歩けば注目の的ーーそんな自分に自惚れていた。

学年のちょっとチャラい女の子たちとローテートするように日替わりで女の子と帰って、その後に俺のタイプだったら抱く。
ただそれだけのことをしてた気がする。


しかしある日高三の夏くらいに女の子と帰っていたら、視線を感じた。
その視線は一瞬で俺が後ろを向いた時にはもう視線が向いてる気配を感じることはなかった。


その女の子と寝てから二日後にようやくまともに家に帰った日に母親から

『そういえば、昔仲良くしてもらってた中学の時の保健医の先生が二日前転勤なさってね〜感謝として、って菓子折頂いたのよ』


先生が転勤したと話を聞いた。
場所はここから遠く離れた県で、田舎の中の中学校に転勤になったらしい。

なんで俺に言わなかったの
その思いが頭にこびりつく。

菓子折を開けると茶封筒が一枚入っていて、
その表紙には『隼斗へ』と小さい字で書かれていた。

(隼斗へ。急に転勤でいなくなってしまうことになってすみません。君に言わなかったのは特に理由はなかったです、ただ急に転勤になってしまっただけなんです。次は田舎の方にある中学校に転勤になりました。…中学校と聞くと懐かしいですね、あの時のーー僕と君が出会った時を思い出しますね。思い出話をすると歓喜あまって泣いてしまうのでここら辺にしときましょう、また会えたら良いですね。司)

短い文とともに、お世辞しか言っていない先生からの手紙に苛立った。

俺が最近抱かなかったから怒ったの?
自分を優先されなかったのが嫌だったの?

きっと先生はこういうんだ。

『ううん、君は悪くない。僕が悪いんだ』

…そうやって自分ばかり貶して悪者にして、お人好しすぎるんだ。


母親からその話を聞いたその夜、俺は夢を見た。好きだ、と小さい俺が言うと
『僕も、』と先生が笑う。

ぱちっと目が開いて、思い出した。
初めて先生を抱いた日ーー俺は先生に好きだと言ったんだ。

先生はそれを聞いて、俺と恋人のつもりだったんだろうか?

…そう思うと今まで抱かれてた先生が嫌なほどムリをしていたことを思い出すのだ。



先生が用意したであろうご飯は食べずに帰って、部屋に着くなりすぐにセックスする…。
声をあまり出さずに、抱きつかずにシーツを握りしめる小さな拳を作っていた先生が頭に思い浮かぶ。

『ご飯…作ったけど食べないの?』
「ああ、別にいらないから」
『そっ、か…そうだね』

無理して笑う先生の顔をきちんと見なかったのは、この俺だ。
…だけど今更思い出して、振り返って自分の酷さと先生に他の女の子たちと違う特別な思いを持っていたことに気づかされる。

呆れたことに流れ出した涙は止まることを知らずに、声を上げずにその日は泣いた。
先生をーー男を想って泣いた。





俺は先生を愛してた。







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