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第6章

「きっと、過度なストレスを長期間に渡って与えられたから、今まで溜め込んでいたものが爆発してしまったんでしょう……」

 蔵馬は飛影の生い立ちを思い出すように言った。
 産んでくれた人に、愛してもらえるはずたった人に存在を否定され、ストレスの捌け口として扱われる。それは一体どれほどの苦痛と絶望だったのだろう。

 蔵馬がもう一度瞳の頭を撫でようとしたその時。

「ぅ……ん……」

 瞳の瞼がゆっくりと開かれた。それに気づいた幽助は、医者を呼びに勢いよく病室から飛び出していった。

「……瞳ちゃん、オレの事、わかる……?」

 辺りを見渡し、瞳の視線は蔵馬へ移される。状況を確認するように、何度か瞬きをした後、ぽつりぽつりと話始めた。

「……はい……。家の、前にいた……」

「そうだよ。よかった、意識はハッキリしてるみたいだね。あぁっ、まだ体は横にしていた方がいい」

 無理やり体を起こそうとする瞳を制止し、蔵馬は担当医を待った。3日も眠っていたのだ、頭の回転は鈍っているだろうから、状況確認をするのはもう少し後の方がいいと判断した。

 担当医が駆けつけると、瞳は軽い問診の後、後遺症等がないか検査を行う事になった。瞳は不安そうにしていたが、蔵馬が声をかけると、安堵した顔を見せる。
 一通り検査を終え、病室に戻ってきた瞳は、蔵馬と幽助に感謝と謝罪を述べた。

「本当にありがとうございました。助けてくださって……なんとお礼をしたらいいか……」

「気にしなくてもいいんだよ。オレたちは当然の事をしたまでだし」

「コイツの言う通りだぜ! んなこた気にする必要ねぇって」

 なんとも申し訳無さそうにする瞳を励ますように、二人は口を揃えて言った。すると、瞳の顔はみるみるうちに歪み、ボロボロと大粒の涙をこぼし始めた。

「ごめ、なさっ……こんなに……優しくして、もらったのは……ひっ……初めてで……ひぐっ……」

 拭いても拭いてもこぼれ落ちる涙を止められるはずもなく、瞳は感情のままに泣いた。蔵馬はそんな瞳を言葉で慰めるような事はせず、ただ瞳の頭を撫で、幽助は二人を見守った。










 一頻り泣いた後、蔵馬と幽助は事の顛末を聞くこととした。

「……っと、そういえば、まだ自己紹介してなかったよね。オレは蔵馬。一応、人間界では南野秀一という名前で生活してる。よろしくね、瞳ちゃん」

「オレは浦飯幽助。今は妖怪やってっけど、一応元人間な。まぁそこら辺は説明すっと長くなっちまうから、また今度ってことで。よろしくっ!」

 二人は瞳に微笑みかけた。

「はい! お二人共、よろしくお願いします!」

 二人に応えるように、瞳は元気な笑顔を見せる。
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