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第1章

 しかしその望みが叶うことはなく、飛影の目は閉じられ、キツく握りしめたはずの手が、滑り落ちた。
 目の前が滲み、飛影の顔が、上手く見られない。

「飛、影……? 目を、開けてよ……。こんな事じゃ、貴方死んだりしないでしょう……? ねぇ、飛影……ひえ……っ……!!」

 言葉にならない声を上げた。

 理解したくなかった。

 “飛影はもういない”

 それを理解したら、飛影が死んでしまった事を認めた事になる。



 それは、蔵馬にとって一番怖い事。



 飛影の妖気はもう既に消えていて、核も動いていない。呼び掛けたって、返事は返ってくる筈がない。
 それでも蔵馬は、飛影が目を開けてくれる可能性にすがっていた。

 自分はバカな男だと思った。
 飛影を無理矢理犯したうえに、こんな事故からも守ってやれないで、何が恋人なのだ。

 蔵馬は力一杯に飛影を抱き締めて、涙を流し続けた。


 悔しさと、悲しみを込めて。
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