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第6章

「っ……コエンマ様……私は、どうなるのでしょうか……。親殺しが、とても罪深いことは、承知しています……妖怪が、人間を殺害してしまうことが、重罪だというのも……」

 瞳は拳を力強く握りしめ、覚悟を決めようとしていた。

 母を憎んでいた。嫌いだった。あの生活から抜け出したかった。しかし、今日まで自分が生きて、ここまで成長出来たのは、紛れもない母のおかげだった。
 人と同じ外見で、出生届を出してしまった手前、どうすることも出来ずにただ育てていただけかも知れないが。

 初めはそれを愛だと勘違いしていた。寂しく思うこともあったが、それが普通なのだと、疑いもしなかった。母は、愛など一欠片も寄越してなどいなかったというのに。
 母を愛していなかった訳ではない。この世から旅立ってしまったとなれば、悲しみを覚えて涙を流す。

「そうだな、確かに妖怪が人間を殺すのは重罪だ。ましてや親殺しなど、重犯となろう」

 握っていた拳に、更に力が入る。

「どんな罰でも、受けます……私はっ……!」

「まぁ待て! 話を最後まで聞かんか。ワシにもちぃと事情があってな、お主を重犯罪者として捕える訳にはいかんのじゃよ」

「……へ……?」

 瞳にとって、コエンマの言葉は予想外だった。思わず顔を上げた瞳に、コエンマは話を続けた。

「瞳よ。お主の前世での活躍がな、とても素晴らしいものだったんじゃ……だが、そやつはこれからという時に不慮の事故で死んでしまってな……。そしてその生まれ変わりがお主という訳じゃ」

「前世の、私……?」

 考えたこともなかった。前世の自分は、一体どんな人物だったのだろう。

(コエンマ様が素晴らしいと言うくらいだし、私とは違って、みんなから愛される人だったのでしょう……)

 今の瞳には、前世の自分の話を聞く勇気はなかった。それを知った所で、今更自分を変えることは難しい。その人の真似をして、上手くいくとも、周りに受け入れられるとも限らない。

「それでな、お主を霊界へ連れて行っても裁くことが出来ないんじゃ。しかし野放しにすることも出来ん。今後力が暴走しないとも限らんからのぅ」

 瞳にはもう家がない。コエンマはどこに瞳の身を置くかという相談も兼ねて、蔵馬の呼び出しに応じたのだ。
 そこで、蔵馬が意見を述べた。

「コエンマ、そのことなんですが。瞳ちゃんの身を、オレに預けてもらえませんか」

 蔵馬の発言に、瞳だけが驚き、幽助とコエンマは“やっぱりな”と呆れたような、喜びにも見える表情を見せた。片や瞳は状況が飲み込めず、ただただ困惑してしまう。
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