第6章
元々軽度の火傷だった瞳は、検査の問題も特になく、すぐに退院することが出来た。医者によれば、少し痕が残っているが、自宅で適切な処置をすれば、炎症した皮膚も綺麗になるそうだ。
問題があるとすれば、今後の瞳の処遇だろう。
「あの、蔵馬さん、幽助さん。側にいてくださって……本当にありがとうございました。とても心強かったです。母は、きっと、来てくれないでしょうから……」
瞳が目を覚ました後、何故病院にいるのかわからない、という表情から、事件の記憶がないのは察することが出来た。何も知らないのだ。自分の母が、家が、どうなったのか。自分が何をしたのか、これからどうなるのか。
「瞳ちゃん……そのことなんだけど……。一度、オレの家に来てくれないかな? 会わせたい人がいるんだ」
「え? えぇ、それは構いませんけど……」
蔵馬は事前に、コエンマを自宅へ呼んでいた。瞳をどうこうする権利は蔵馬にはない。いくら瞳を弁護しても、処遇の最終決定権は霊界にある。しかし、コエンマならなんとかしてくれるのではないかと、一縷の望みに賭けて、忙しい中人間界へ来てもらったのだ。
蔵馬は瞳の後ろへ回り、車椅子を押して幽助と共に自宅へ向かった。
「さ、着いたよ。ごめんね、バリアフリーじゃないマンションだから、動きにくいと思うけど……なるべくオレがサポートするから」
蔵馬はそう言って玄関の鍵を開けると、車椅子は幽助に任せ、瞳を抱き上げて部屋へ入った。
「おぉ、幽助、蔵馬。やっと帰ってきたか。待っておったぞ」
先に部屋へ入っていたコエンマに軽く会釈すると、幽助はコエンマの隣へ、蔵馬は瞳をコエンマの対面に座らせた。蔵馬は瞳の隣に座り、瞳にコエンマを紹介する。
「蔵馬さん……この人が、私に会わせたいっていう……?」
「そう、この人はコエンマ。閻魔大王の息子で、幽助の上司なんだ」
瞳は困惑した表情を見せた。突然目の前に、霊界の関係者、それも閻魔大王の息子という人物が現れたのだ。無理もないだろう。
「それで、その……どうして、コエンマ様が……?」
困惑する瞳に、蔵馬は順を追って説明する。
あの日、帰り道で瞳の家の方角から、大きな妖気を感じたこと。瞳の家が火事になっていたこと。炎の中から大きな火傷もなく、瞳が出てきたこと。そして、瞳の母が亡くなったこと。
説明していくうちに、瞳の顔が青ざめていくのが分かる。酷な事だが、瞳には全てを知る権利があり、蔵馬達には話す義務がある。瞳の心のケアも必須だろう。
「……それじゃあ……私が……母を……?」
自分の両の手のひらを見つめ、瞳は恐怖に震えた。自分で自分の家を焼き、実の母親を殺害した。そんな事、簡単に受け入れられるはずがない。
瞳は嗚咽を漏らしながら、涙を流した。
問題があるとすれば、今後の瞳の処遇だろう。
「あの、蔵馬さん、幽助さん。側にいてくださって……本当にありがとうございました。とても心強かったです。母は、きっと、来てくれないでしょうから……」
瞳が目を覚ました後、何故病院にいるのかわからない、という表情から、事件の記憶がないのは察することが出来た。何も知らないのだ。自分の母が、家が、どうなったのか。自分が何をしたのか、これからどうなるのか。
「瞳ちゃん……そのことなんだけど……。一度、オレの家に来てくれないかな? 会わせたい人がいるんだ」
「え? えぇ、それは構いませんけど……」
蔵馬は事前に、コエンマを自宅へ呼んでいた。瞳をどうこうする権利は蔵馬にはない。いくら瞳を弁護しても、処遇の最終決定権は霊界にある。しかし、コエンマならなんとかしてくれるのではないかと、一縷の望みに賭けて、忙しい中人間界へ来てもらったのだ。
蔵馬は瞳の後ろへ回り、車椅子を押して幽助と共に自宅へ向かった。
「さ、着いたよ。ごめんね、バリアフリーじゃないマンションだから、動きにくいと思うけど……なるべくオレがサポートするから」
蔵馬はそう言って玄関の鍵を開けると、車椅子は幽助に任せ、瞳を抱き上げて部屋へ入った。
「おぉ、幽助、蔵馬。やっと帰ってきたか。待っておったぞ」
先に部屋へ入っていたコエンマに軽く会釈すると、幽助はコエンマの隣へ、蔵馬は瞳をコエンマの対面に座らせた。蔵馬は瞳の隣に座り、瞳にコエンマを紹介する。
「蔵馬さん……この人が、私に会わせたいっていう……?」
「そう、この人はコエンマ。閻魔大王の息子で、幽助の上司なんだ」
瞳は困惑した表情を見せた。突然目の前に、霊界の関係者、それも閻魔大王の息子という人物が現れたのだ。無理もないだろう。
「それで、その……どうして、コエンマ様が……?」
困惑する瞳に、蔵馬は順を追って説明する。
あの日、帰り道で瞳の家の方角から、大きな妖気を感じたこと。瞳の家が火事になっていたこと。炎の中から大きな火傷もなく、瞳が出てきたこと。そして、瞳の母が亡くなったこと。
説明していくうちに、瞳の顔が青ざめていくのが分かる。酷な事だが、瞳には全てを知る権利があり、蔵馬達には話す義務がある。瞳の心のケアも必須だろう。
「……それじゃあ……私が……母を……?」
自分の両の手のひらを見つめ、瞳は恐怖に震えた。自分で自分の家を焼き、実の母親を殺害した。そんな事、簡単に受け入れられるはずがない。
瞳は嗚咽を漏らしながら、涙を流した。