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第5章

「嫌い……嫌い……何もかも、皆……嫌だ……」

 ボソボソと声に出す。恨み辛みを吐き出すように。

「何をブツブツと言っているの! 話を聞いているの!?」

 母親がもう一度ムチを振り上げたその時。

「みんな……消えてしまええええええええええ!!」

 瞳の怒りが爆発し、辺りは炎に包まれた。

「な、なに!? なんなのよこれぇっ!?」

 母親の声は悲鳴に変わり、慌てふためく様子に瞳はかすかに笑みを浮かべた。外へ逃げようと、玄関へ向かう母親を、炎が遮る。

(ニガサナイ……)

 母親が瞳の方を振り向くと、そこには宙に浮かぶ瞳の姿があった。既に瞳に意識はなく、額にある第三の目が、母親を捉えていた。

「いやぁああ!! 誰か! 誰か助けて頂戴!! 誰かああああ!!」

 屋敷内には、母親の悲鳴が響くだけだった。















 散歩の後、幽助と蔵馬はその足で夕食の買い物に、近くのスーパーへ訪れていた。

「幽助は帰らなくていいんですか? 家で螢子ちゃんが待ってるんでしょ?」

 蔵馬がそう言うと、幽助は「その話はやめてくれ」と言わんばかりに眉を潜めた。

「それがよぉー、螢子のヤツ、オレが気ぃ使って家中の掃除とガキの世話してやったっつうのに、なぁんか不満そうにすんだよ。何が不満なんだって聞いても答えてくんねぇしよぉー」

「痴話喧嘩ですか?」

 蔵馬は少しからかい気味に問う。幽助は幼馴染である雪村螢子と結婚し、3歳の子供がいる。何度が会わせてもらったが、幽助の血筋だけあって、3歳にしてはかなり霊力のある子供だ。

「でも、喧嘩なんて日常茶飯事だったんでしょう? 何か心当たりないんですか?」

 蔵馬がそう問うと、幽助は恥じらう乙女のようにもじもじし始めた。

「その……心当たりが無くは、ねぇんだけどよ……ガキもいるし、なんつーか……」

「っ……ぷはっ! ぁは、あははっ……!」

 らしくもなく恥じらう幽助がなんだか可笑しくて、蔵馬は吹き出してしまった。なんだよ、と幽助に責められるが、どうにも面白くて堪えられない。

「はー……幽助が、そんな事を言うなんてっ……思いもしなかったので、つい……くっ、すみませんっ……」
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