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第5章

 飛影が蔵馬の前から姿を消してから、もう10年もの時が過ぎた。蔵馬は未だに飛影とは再会出来ていない。もしかすると、まだ転生出来ていないという可能性もある。

 だが、最近蔵馬が街を歩いていると、ふと飛影に似た妖気をかすかに感じる事があるのだ。

 人間が輪廻転生をした場合、平均4~5年で生まれ変わると言われている。ただ妖怪の場合はどうだろうか。ただでさえ飛影は元盗賊で、S級クラスだ。そう簡単に転生させてくれるかはわからない。
 それに、また同じ妖怪として転生する可能性は極めて低い。感じる妖気もあくまで飛影のものと“似ている”だけだ。










 ある日蔵馬は、天気がいいからと幽助に連れられて、散歩に出掛けていた。いつもは通らない道を通ってみよう、ということで、何本か裏路地を通り抜けていくと、西洋風の外観をもつ大きな屋敷に辿り着いた。

「ぅおっ……すっげー。でけぇなぁ……」

「四次元屋敷より大きい……というか、広いですね」

 二人は屋敷を見上げ、奇妙な部分がいくつか見当たることを話に持ち出した。
 手入れがされていないと思われる錆びた門や、所々崩れた外壁。冬でもないのに枯れている庭木。屋敷に至っては、全てカーテンが閉まっていて、中の様子を見ることは出来ない。

 「空き家かもしれないですね。誰も買う人がいないんでしょう。そろそろ行きましょうか、幽助……って、えぇっ!?」

 蔵馬の隣に居たはずの幽助は、いつの間にか、門を乗り越えようと足を掛けて登り始めていた。
 不法侵入になりかねないと焦った蔵馬は、幽助を止めようと門へ近づいた。近くに寄ると、門のすぐ横には表札があり、汚れてはいるがしっかりと名前が刻まれていた。

 サーッと蔵馬の血の気が引いていった。人が住んでいる。幽助が中に入れば確実に不法侵入で訴えられる。

「ゆ、幽助、降りてください! 表札に名前が書いてありますから、人が住んでますよ!」

「なぁんだよ蔵馬、カーテン閉まってんだし、ちょっとぐらい大丈夫だって!」

 様子を見るだけだから、と言って聞かない幽助を、蔵馬は無理やりにでも降りさせる。幽助は、心配性だの何だのと蔵馬に文句を垂れ、ちょっとした口論になっていた。

「あの……うちに何か御用でしょうか……?」
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