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第4章

「……いいです。例えどんな姿になっても、飛影なら、オレは愛せます」

 蔵馬は答えると優しく微笑んだ。何故そんなにも簡単に、断言できてしまうのか。飛影は不思議でたまらなかった。

「っ……本気で、言っているのか……? 妖怪でも、人間でもなかったら、見つけられたとしても、オマエが一方的に触れるだけなんだぞ!?」

 蔵馬の手を振り払い、叫ぶ。

「言葉が通じないかも知れん! 意思の疎通さえ不可能かも知れんのだぞ……!」

 蔵馬の顔が滲む。感情が抑えられない。

「オマエは……本当にそれで、満足か!?」

 蔵馬の胸倉を掴んだ。ワナワナと震えてしまう手を、どうにも止められなかった。

 飛影の熱意に、蔵馬は唖然としていた。しかしそれ以上に、飛影は自分自身に驚いていた。

 蔵馬のことになれば、自分はこんなにも感情を表に出せる。いつもは恥ずかしくて言えないことも、今なら全て言えてしまいそうなほどに。
 それほどまでに、自分は蔵馬を想っているのだ。

「……飛影……。オレのこと、そんなに想ってくれていたんですね……。正直、驚きました。」

 蔵馬は手を伸ばし、そっと飛影の涙を拭った。

「確かに、貴方に触れてもらえなかったり、意思疎通が出来ないのは辛い。だけどオレは、貴方にそばに居てもらえるだけで、とても幸せになれるんです」

「……そんなの……っ……」

 自分だって同じだ。蔵馬のそばに居られるのなら嬉しいし、幸せだ。
けれど、それでは満足出来ないほど、欲張りになってしまった。

「……駄目なんだ。それでもオレは、オマエに触れたいし、触れられたい。オマエと言葉を交わして、笑いあって……オマエのことを、もっと知りたい……」

 トン、と蔵馬の胸に、頭を預ける。胸倉を掴んでいた手の力を、少し緩めた。

「オレは、オマエと過ごす時間が好きだ……。いつまでも、オマエと二人で……。だから、“そばにいるだけでいい”なんて、言うな、蔵馬っ……」

 最後まで言い切ったつもりだったが、蔵馬を呼ぶ声はかすれ、声になっていなかったように思える。蔵馬が拭ってくれた涙はまた溢れ、飛影は嗚咽を漏らした。かつてこんなに泣いたことがあっただろうか。
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