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第4章

(もうすぐ蔵馬が来るな……)

 飛影は、霊界に向かってくる蔵馬の気配を感じ取り、早く到着しないものかと待っていた。

 今、自分はこんなに緊張している。早く来て欲しいのに、今来られたら、喋ろうとして考えていた言葉が全部、どこかへ吹き飛んでいってしまいそうだ。

「飛影……!!」

「わっ!?」

 そんな事を考えていると、後ろから蔵馬に強く抱きしめられた。

「飛影……! ごめん、ごめんなさい飛影。……オレ、守ってあげられなくて……!!」

 蔵馬はそう言うと、飛影を抱きしめる腕の力を強める。そんな蔵馬を愛しく思い、飛影は振り返ると、優しく抱きしめ返す。

「そんなに自分を責めるな……」

 そっと背中を撫でてやる。少し蔵馬の力が弱まったのがわかった。

「貴方は優しいですね……」

「……蔵馬。……話があるんだ。聞いてくれるか?」

 飛影は、蔵馬から一度離れ、恐る恐る尋ねた。
 蔵馬は当然のようにニッコリ笑って、「もちろん」とだけ言って、飛影の言葉を待った。

 先程蔵馬が抱きついて来たせいで、考えた言葉は全て吹き飛んでしまったけれど。思ったままに、心のままに言えばいいと、飛影は思った。

「蔵馬……オレは、死んだ。このまま審判の門を潜れば、オマエとは会えなくなる。だから……オレは、生まれ変わってくる。いつになるか分からないが……必ず生まれ変わってくる。だから、待っていてくれないか」

 声が震えそうになるのを堪える。言いことはこれだけでは終わらない。蔵馬に言いたい事は、まだ山ほどあるのだ。

「もちろんだよ、飛影……。ずっと、いつまでも待ってるから。オレの所に、戻って来てね?」

 飛影は素直に感謝した。

 安堵からか、飛影の目からは、いつの間にか涙が零れ落ち、その涙は氷泪石へと変化した。

 蔵馬と体を重ねる時、度々涙を零したことがあったが、今まで気が付かなかった。
 自分の涙も、氷泪石になるという事。


 少しは母親の、氷女の血が入っているという事なのだろうか。


「だが……本当にいつになるか分からない。それに、また妖怪に生まれ変わるとも限らない……。それでも、いいのか?」

 そうだ。妖怪でもなく、人間でもなかったら、蔵馬は一体どうする?それが心配だ。もしも昆虫だったら、直ぐに死んでしまう儚い命。犬や猫のような動物であっても、人間の寿命の長さとは比べ物にならない。

 それでは、何度生まれ変わってもキリがない。
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