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第3章

 ぼたんは、飛影の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったのか、一瞬目を丸くしていたが、OKとだけ言うと、人間界へ蔵馬を迎えに向かった。










 ――――人間界。
 飛影が羞恥心を抱えている間にも、通夜は無事に終わり、蔵馬は自宅でぼたんが来るを待っていた。

 恥ずかしげもなく『愛してる』と伝えた今、飛影がどんな反応をしているか、想像していた。否。想像しなくても分かる。顔を真っ赤にしていることだろう。

 目に浮かんだ光景に思わず笑みを浮かべていると、ぼたんが窓を軽くノックする。
 待ってましたと言わんばかりに、蔵馬は素早く窓を開けた。

 ぼたんはふふっと笑うと、

「『オレもだ』だってさっ! お熱いねぇ、お二人さんっ」

 蔵馬は自分の耳を疑った。

 飛影が素直にそんな事を言うなんて、思っていなかったのだ。
 珍しく身体中が熱くなった。

 いつも相手に“愛”を口にしてもらうことを、強く望んでいたのに、いざ言われてしまうと照れくさくなってしまう。
 蔵馬はその場に座り込み、可愛いな、などと思っていた。

 ぼたんは、「行くよ」と蔵馬に呼び掛けると、櫂の後ろへ乗せて、霊界へ向かった。




 飛影がどれだけ自分を想ってくれていたのか、蔵馬はまだ知らなかった。
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