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第3章

 飛影に、会いたい。この腕で、抱き締めたい。飛影を感じたい。
 自分はこんなにも飛影を求めている。いつの間に、こんなに溺れてしまったのか……。










 ――――霊界。
 自分が死んでしまったことで、蔵馬はだいぶ取り乱していた。
 飛影は自分が死んでからずっと、霊界で邪眼を使い、蔵馬の様子を見ていた。もちろん、自分の通夜の事も。

 飛影は、蔵馬が自分の為に涙を流してくれた事が、どこか嬉しかった。


 ――魔界で生まれてから忌み子と呼ばれ、空に浮かぶ氷河の国から追放され、地に落とされた。皆から恐れられ、血に飢えた子供――


 一度も愛情を注がれた事なんてなかったのに。

 蔵馬は、それを充分すぎる程に注いでくれた。幽助や桑原のような、仲間に注ぐ愛とは違う、特別な愛。


 だから自分は、蔵馬を好きになっていったのだ。


 そろそろぼたんがこちらに戻って来る頃だ。飛影はぼたんの到着を待ちわびていた。


 ぼたんの気配を感じると、飛影の胸は高鳴った。ぼたんは飛影の顔を見ると、言葉の代わりにVサインを出す。それと同時に、飛影の不安そうな顔はすぐに消え失せた。


 蔵馬が会いに来る。


(なんだ?この妙な気分は……オレが、緊張……? ……いつの間に、こんなに好きになっていたんだ……)

「そうそう、蔵馬からあんたに伝言だよ。『いつまでも愛しています』だってさっ! 愛されてるねぇ、飛影~~」

「なっ……!」

 蔵馬からの伝言を聞いて、自分の顔が徐々に熱くなっていくのがわかった。照れているのだ。
 「好き」だの「愛している」だの、人前では恥ずかしいからやめろと言っていたのに。ましてや伝言として他人に託すなんて。

(本当に……懲りない奴だ……)

 でも、恥ずかしい反面、嬉しかった。幸福感で、身体が満たされていく。
 飛影はぼたんを呼ぶと、

「あ、アイツを迎えに行った時に、『オレもだ』と伝えておけっ!!」

 と、背を向けて叫んだ。今の自分は、絶対に顔が真っ赤だ。
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